宮崎県日南市における棚田保全の取り組み
書誌事項
- タイトル別名
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- The Conservation of Rice Terraces in Nichinan City, Miyazaki Prefecture
- 棚田オーナー制度の現状と課題
説明
<BR>1.はじめに<BR> 近年、全国各地で棚田保全の取り組みが活発に行われている。それらの取り組みの中で、都市住民に農業体験の場を提供する棚田オーナー制は、棚田保全と共に、地域の活性化にも結びつくことから注目されている(たとえば、中島,2003)。今回、宮崎県日南市酒谷地区における坂元棚田を対象に、棚田の保全とオーナー制度の現状について調査を行った。<BR> <BR> 2.坂元棚田の概要<BR> 宮崎県日南市西部に位置する坂元棚田は、昭和初期の耕地整理事業(面積約5.3 ha)によって、小松山(標高989m)の南西斜面の標高約330~250mに開発された。1枚あたり5アールの長方形に区画された棚田は、設計段階から馬耕が可能となるように道路や畦道の幅が決められ、総延長約1,500mに及ぶ灌漑用水路も開削された。平成11年7月の「棚田百選」選定を契機に、棚田保全整備事業が始まり、用水路・道路等の整備が進んだ。さらに、平成18年10月の第12回全国棚田(千枚田)サミット開催に伴い、周辺道路・展望台も整備された。現在、棚田の総面積は9.4 ha(日南市農林水産課資料)となっている。<BR> 平成19年7月現在、坂元集落の全16戸のうち12戸が棚田で稲作を行っている。坂元集落を含む日南市酒谷地区は、人口1,384人、世帯数626、高齢化率45.3%であり、人口減少と高齢化が進行した地域である。<BR> <BR> 3.棚田の保全と地域活性化の取り組み<BR> 坂元棚田を保全し、地域活性化に生かすという試みは、坂元集落の住民7名の活動から始まる。平成7年に彼らが組織した坂元棚田れんげの里づくり協議会は、棚田でれんげを栽培し、れんげ祭りというイベントを開催するという村おこしの活動を始めた。このイベントの参加者が増大したため、その後、酒谷地区むらおこし推進協議会(平成5年発足)に引き継がれ、棚田祭りとして酒谷地区全体の観光資源として利用されるようになった。<BR> <BR> 4.棚田オーナー制度の現状と課題<BR> 坂元棚田のオーナー制度は、酒谷グリーンツーリズム協議会(平成13年発足)による主催で平成14年から始まった。この協議会は、酒谷地区むらおこし推進協議会の支援組織である「やっちみろかい酒谷」が立ち上げた組織で、農村地域の活性化を目指して、オーナー制度の他にも農作業ボランティア、収穫祭等のイベントの開催、農家民宿の提供などを行っている。こうした活動には、地元住民のリーダーの存在が大きく、各イベントの企画・運営に貢献している。<BR> オーナー制度の運営に関わる事務的業務(オーナー募集、地元農家との調整、イベント準備など)は、制度開始当初から、行政(日南市農林水産課)が担当している。年数回行われるイベント(田植え、石垣清掃、収穫祭)は、地元住民、オーナー、ボランティアが協力して行っている。オーナーは、年会費35,000円(うち5,000円は棚田保全協力金)を支払い、年4回の農作業を地元農家の指導の下で行い、特典として、白米約25kg、年2回送付される地元農産物を受け取れる。平成19年度のオーナー制度には、32組の参加(募集35組)があり、前年度からのオーナーの継続率は約6割である。オーナーの居住地は、宮崎市や都城市など県内が29組、県外が3組となっている。<BR> オーナー制度の今後の課題としては、事務的業務を担う人材の確保、若い世代の村おこしのリーダーの育成、地権者以外の地元農家の収入の確保などが考えられる。
収録刊行物
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- 日本地理学会発表要旨集
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日本地理学会発表要旨集 2007f (0), 54-54, 2007
公益社団法人 日本地理学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680668459904
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- NII論文ID
- 130007013905
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可