地方自治行政への地理空間情報活用推進基本法の影響と期待

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  • The effect and expectation of the Basic Act on the Advancement of Utilizing Geospatial Information in view of local administration

抄録

<BR>1. 地理空間情報活用推進基本法に基づく技術上の基準<BR>  国や地方公共団体が他団体の測量成果との接合を意識することは稀である。国道・都道府県道・市区町村道の交差点等で、それぞれの管理者によって別々の基準点が隣同士に置かれ、その座標が数十センチもずれていることも珍しくない。そのずれている基準点から測量された道路縁のデータも、交差点でずれている。このため、国や地方公共団体の道路データがあるにもかかわらず、電力・ガス・電話会社やカーナビゲーション用地図の作成会社は独自に測量することが多い。<BR>  これに対して、地理空間情報活用推進基本法第16条第1項の規定に基づく地理空間情報活用推進基本法第2条第3項の基盤地図情報の整備に係る技術上の基準(平成19年国土交通省告示第1144号)では、国や地方公共団体が基盤地図情報を整備するときは、次の基準に適合するものとされた。<BR> (1) 既存の基盤地図情報の利用基準<BR> (2) シームレスな基盤地図情報の整備基準<BR> (3) 広域のシームレスな基盤地図情報の整備基準<BR> (4) 基盤地図情報が適合すべき規格<BR> 測量に対する多重投資の防止、信頼性が高くて安価な地図の普及に、基本法は貢献することになろう。<BR> <BR> 2.整備基準に関する課題<BR>  (3)の実践には課題が多い。2002年4月以降の公共測量は日本測地系2000(世界測地系)に基づいている。従来の日本測地系からの移行方法は、測量計画機関ごとに異なっている。図郭の代表点のみに依拠して座標変換をする方法をとった機関もある。隣接する機関の測量成果の接合を進めるには、各測量成果の経緯や方法を調査し、適切に作業を進めなければならない。<BR>  測量成果の広域での接合を実践してきたのは、大阪府地域におけるGIS大縮尺空間データ官民共有化推進協議会、三重県、岐阜県など僅かな例に限られる。ほとんどの国の機関や地方公共団体にはこのような経験がない。人材の養成、マニュアルの整備、相互調整のための体制の整備などが急務である。<BR> <BR> 3.符号化の規格に関する課題<BR>  (4)については、ISO19118(地理情報―符号化)またはISO19136(地理情報―地理マーク付け言語)に適合していなければならない。つまり、XMLまたはGMLで符号化しなければならない。XMLで符号化するためには、タグの名称やXMLスキーマを製品仕様書で定義することになる。<BR>  総務省「共用空間データ調達仕様書及び基本仕様書」、国土交通省「道路基盤データ製品仕様書(案)」、国土交通省「数値地図2500(空間データ基盤)製品仕様書(案)」など、多くの製品仕様書案が作成されている。これらの仕様書案との整合、多くの部署に渡る統合型GISの実現などを考慮しながら、製品仕様書を作成することができる職員は、地方公共団体にはほとんどいない。各種の標準や製品仕様書案に関して知識を有し、団体間の調整をする能力を持った職員を各団体が養成することも必要である。わかりやすい解説書の作成、研修制度の充実、職員間の技術交流などを進めなければならない。<BR> <BR> 4.おわりに<BR>  隣接地域との調整、空間データの一つ一つのタグまで定める仕様書の作成など、従来よりも発注のためのコストが増加する。その一方、国や地方公共団体が多くの項目を公開することによる経費節減効果が国民にどのくらい還元されることになるのであろうか。費用と効果の研究例が現れることが望まれる。<BR>  国民の理解を求めることも必要である。空間データの標準化と公開によってもたらされる利益が国民に享受され、ますますその進展が期待されるようにならなければならない。まずはそのような事例を積み重ね、国の機関や地方公共団体が競ってその実現を目指すようになることが望まれる。<BR>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680668462848
  • NII論文ID
    130007013912
  • DOI
    10.14866/ajg.2008s.0.264.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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