平ヶ岳におけるハイマツの成長量変動

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タイトル別名
  • The growth rate changing of Pinus pumila in the Mt.Hiragatake, Central Japan.

抄録

はじめに 群馬・新潟県境にまたがる山岳地帯は奥只見・奥利根と呼ばれ日本でも有数の豪雪地帯である。この地域に成育する植物はこの積雪の影響を強く受けており、山地上部に湿原が多数存在するなど独特の植生が発達している。 しかし、近年湿原の乾燥化や他地域からのニホンジカの流入などが報告されている。これらは、近年認められている積雪量の減少や気温の上昇によるものではないかと指摘されているものの、具体的な関連性は明らかにされていない。 そこで、この地域における積雪量の減少などが植物へどのような影響を与えているかを明らかにするために、この地域に成育している樹木の年輪の調査を行い、気候の変動が樹木の成長に対し影響を及ぼしているかどうかを検討した。調査方法 調査はこの地域のほぼ中央に位置する平ヶ岳において行った。平ヶ岳頂上部に成育しているハイマツ10本を地際部で切断・採取して持ち帰り、年輪幅の読み取りを行った。 気候資料に関しては、平ヶ岳において長期的に観測された積雪深記録が無いため、近年観測されている平ヶ岳の積雪深記録と近隣の観測記録を比較して、平ヶ岳に積雪の傾向が近いと考えられる近隣の観測点を選び出し、その観測点における観測記録を用いた。結果と考察 平ヶ岳の積雪深変動と近隣の積雪深観測点の積雪深変動を比較検討したところ、平ヶ岳に積雪深変動傾向が近いのは新潟県十日町にある森林総合研究所十日町試験地であった。その十日町試験地の年最大積雪深と気温の変動を図1に示す。 調査によって採集されたハイマツの平均樹齢は63.2で最も高いものは100、最も低いものは40だった。ハイマツの年輪幅の平均値の推移を図2(棒グラフ)に示した。これより、1970年代後半から1980年代終わりにかけて年輪成長が著しい事が判った。山岳地におけるハイマツの成長には気温などが関連している事が知られている。そこで、各月の気温とハイマツの成長量に関して相関をとったところ、5月・6月の気温とある程度相関がある事が判った(図2実線)。しかし、これだけでは1970年代後半から1980年代終わりにかけての急激な成長量の増加を説明する事はできなかった。その他の要因、すなわち、積雪量や根雪日数なども比較検討してみたが、ある程度の関連性はあるものの、この急激な成長量の変動を説明する事はできなかった。このハイマツの急激な成長量増加の要因を明らかにするためには、平ヶ岳におけるハイマツの成育環境とその変化について更に詳しい調査を行う必要があるだろう。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680668513152
  • NII論文ID
    130007014012
  • DOI
    10.14866/ajg.2005s.0.260.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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