風化殻の節理および物性変化から見た阿武隈山地・桧山における花こう岩の風化分帯

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  • A Study for Zoning of Granitic Weathering Crust in Hiyama,Abukuma Mountains

抄録

<BR>1.はじめに<BR>  風化殻の分帯を行うことによって,風化殻の発達過程を段階的に示すことができる.山内・藁谷(2006)は,黒石山の斑れい岩体を対象として,旧地表面からの深度(D,m)による節理密度(Dj,n/φ1m)やおもな物性値の変化から風化殻の分帯を行った.その結果,Dが約-35m以浅で風化殻が急激に発達することが明らかになった.本研究では,山内・藁谷(2006)が対象とした黒石山(864.5m)の東北東約16kmに位置し,花こう岩からなる桧山(標高992.5m)の南西側山腹の採石場を対象として,DによるDjや一軸圧縮強度(Sc,N/mm2)(シュミットハンマー反発強度(R,%)からの換算値),超音波伝播速度(Vp,km/s)の変化から風化殻の分帯を行う.また,黒石山斑れい岩体の風化殻発達過程との比較を行う.<BR> <BR> 2.研究対象地域の地形・地質概要<BR>  桧山は,花こう岩類が広く分布する阿武隈山地の中央部に位置する.桧山の南西側山腹の採石場(標高約860~910m)は東西に広く(幅約210m),最大比高約40mの大露頭が見られる.ここでは,ほとんど風化を受けていない基盤から,マサのなかに長径数10cm~数mの核岩がとり残された風化殻上部までの花こう岩の風化殻を連続観察できる.桧山は,周囲にくらべて凸の地形を呈し,斜面は急斜面になっている.ただし,西側斜面は,山腹から山頂にいたる標高810m~992.5mでは緩斜面になっている.<BR> <BR> 3.測定方法<BR>  現地では,Dが異なる7地点において,Dj,およびRを測定した.また,5地点から採取した試料について,Vpを測定した.Djの測定は,鉛直・水平の方向に関らず,直径1mの円周に接するすべての節理の本数を数えた.測定箇所数は,調査地点によって異なる(2~13箇所)が,測定総本数を測定箇所数で割って,その調査地点での平均本数(n/φ1m)を求めた.Rは,連打法(松倉・青木,2004)で行い,各調査地点において2~5箇所で打撃した.各箇所では,10回以上打撃し,上位3回の平均値をその箇所でのR値とした.Vpは,各試料について1~2箇所で測定を行った.ただし,試料表面のトランスデューサーが接する部分は,平滑になるように整形した.なお,Dは,山内・藁谷(2006)にしたがって,デジタル写真測量で求めた.<BR> <BR> 4.結果と考察<BR>  Djは,Dが約-15~-30mでは0~8本/φ1mであるのに対し,約-15m以浅では4~15本/φ1mであった.Scは,Dが約-15~-30mでは336.5~658.2N/mm2であるのに対し,約-15m以浅では10.6~361.1N/mm2であった.Vpは,Dが約-25~-30mでは5.1~5.5km/sであるのに対し,約-15m以浅では1.0~3.3km/sであった.<BR>  Djは,Dが約-30mから0mに向かうにつれて徐々に増加するのに対し,Sc,およびVpは,Dが約-15m以浅で急激に低下することがわかった.ここで,桧山花こう岩の風化殻の特徴を黒石山斑れい岩体のそれと比較する.桧山花こう岩の風化殻は,これまで述べたように,深度約-15mを境にしてDjやSc,およびVpを大きく変化させる.これに対し,黒石山斑れい岩体の風化殻は深度約-35mを境にして大きく変化する(山内・藁谷,2006).したがって,桧山を形成する花こう岩は,深層まで風化は及んでおらず,黒石山斑れい岩体にくらべておよそ半分の厚さの風化殻を発達させていることが明らかになった.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680668517888
  • NII論文ID
    130007014022
  • DOI
    10.14866/ajg.2007f.0.89.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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