大宮台地のMIS6以降の地形発達史

書誌事項

タイトル別名
  • Geomorphological development of the Omiya upland since Marine Isotope Stage 6

説明

1.はじめに<BR>酸素同位体ステージ(MIS)5の海水準変動が関東平野の台地群の形成に与えた影響が解明されつつあるなかで、大宮台地のの成に与えた影響の復元は不明な点が多い。また、大宮台地北東縁に伏在するとされる綾瀬川断層の活動度や断層長を評価するうえで、台地面の地形的な性格を明らかにする必要が生じている。<BR>2.大宮台地の地下層序と地形概観<BR>大宮台地は荒川の沖積面との間には明瞭な高低差が確認されるが、台地北東部においては台地面が相対的に沈降しているため沖積面との境界が不明瞭である。台地上には多くの開析谷が形成されている。(杉山ほか,1999)。本地域は台地面が2面に分類され、大半が低位の大宮面に分類されて台地北部の標高20 mないし30m以高は高位の木下面とされてきたが、木下面の分布域は曖昧であり、地形面と地下層序との対応関係も不明である。<BR>3.結果と考察<BR>高位面と低位面の境界域を横切る地形地質断面図を作成し、地形面と地下層序との対応関係を調べた。代表的な断面の位置を図1に示す。図1に貝化石の記載等によって確認された木下層の分布範囲も示す。横断面(図2)をみると、木下層の基底は顕著な埋没谷をなす。木下層は上方粗粒化し、上部で貝化石混じりの砂層となり、測方に堆積域を拡大する。大宮層は大きく2枚の砂礫層に分かれ、下部砂礫層は連続性がよく、木下層を整合的に覆う。この断面のすぐ北の南北断面では、両者の指交関係をみてとれる。大宮層の上部の砂礫層は側方変化がやや激しく、礫質部はチャネル状に掘込んでいる。常総粘土層が大宮層の微起伏を埋析し、1〜5mの厚さで堆積する。図2の東西断面は東落ちの傾動運動を示す。木下層頂面の高度差は約11m、常総粘土層頂面の高度差は約9mある。断面の位置が木下層の分布北限付近であることから(図1)、木下層頂面の年代は約12.5万年前と推定され、断面区間での東側の相対沈降速度は約0.09m/kaとなる。この値が一定とすると、常総粘土層の堆積頂面すなわち、大宮面の離水年代は約10万年前となる。木下面は存在するとしても、標高30m前後以高のごく狭い地域に限定される。また、台地北部に堆積する大宮層の下部は木下層と同時異相の扇状地堆積物の可能性が高い。<BR>4.大宮台地の地形発達<BR>大宮台地ではMIS 5eの海進時に、MIS 6に刻まれた急勾配な谷沿いに海が侵入した。海岸線は桶川付近にとどまり、荒川水系の扇状地が海に突っ込んでいた。MIS 5dの海退に伴い出現した延長川は、その上流部(桶川以北)と比べて、縦断勾配が緩かったためにMIS 5eの離水海成面は堆積場となり、整合的に大宮層が堆積した。海退が進むと主流路は若干下刻して砂礫を堆積させた。この時の流路跡が現在の大宮面の主要な開析谷の起源となる。その後、大宮層の微起伏を常総粘土層が埋めるように堆積し、10万年前ころに離水した。大宮台地がMIS 5e と5cの面に分化しなかった理由として、関東平野の内陸側の沈降中心付近に位置していることと、荒川や利根川からの活発な土砂供給の影響が指摘できる。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680668521600
  • NII論文ID
    130007014030
  • DOI
    10.14866/ajg.2005s.0.267.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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