取次帳合からみた書店の分布とその変化

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  • Some remarks on the effects of wholesale merchant on the location of bookstores

抄録

<BR>I はじめに<BR>  近年,小売業では店舗のチェーン化を行う企業が増えている.これは,ほとんどあらゆる業種に共通して見られる動向である.小売業のチェーン化と,それに伴う経営規模の拡大は,従来流通の川下側へのパワーシフトをもたらす要因として理解されてきた.しかし,発表者はこれまでに書店業界においては,小売業者である書店にとって,川上側に当たる卸売部門の企業(取次会社)の影響力が非常に強く,書店のチェーン化の進展が,他業種のように明確な川下へのパワーシフトに繋がっていない状況を明らかにしてきた(秦,2005).<BR> II 問題の所在<BR>  出版物流通業においては,一店一帳合制が基本であり,さらに取次部門は少数企業による寡占状態にある。特に上位二社が経営規模でも突出しており,その影響力は大きいと言われてきた。秦(2005)では,福岡県を事例として取り上げたが,そこでは取次会社によって帳合書店の数に大きな差があり,また書店の立地についても取次会社と書店の垂直的企業間関係が大きく影響していることが明らかになった。全国スケールで見た場合にも,各取次帳合の書店数の多寡には地域的差異が認められると予想されるが,管見の限りこれを実証的に明らかにした研究は見あたらない。<BR> III 資料と研究の方法<BR>  本研究では日本書店商業組合連合会(日書連)の組合員名簿を集計して各取次帳合の全国的分布を分析する。日書連の組合員名簿は,管見の限り書店の取次帳合を全国的に網羅したほぼ唯一の資料であり,日書連によって1960年代から毎年発行されている。このため,複数時点における帳合分布の比較が行えるという利点もある。ただし,発行当初は組合書店名と連絡先が記載されているのみであり,帳合が記載されるようになったのは1985年前後からであるので,本研究では,1985年と2000年のデータを集計し,その結果を比較検討する。<BR> IV まとめ<BR>  集計の結果,1985年から2000年の間に,帳合書店数は全ての取次帳合で減少していたことが明らかになった。また,同時期に,帳合書店数の順位にも全く変動が無いことが明らかになった。全国的には上位二社の寡占状態にあると言われる取次業界であるが,実際には一部この二社のいずれもがトップにならない県も存在していることが明らかになった。さらに,上位二社以外についても帳合書店の分布には取次会社毎に違いが見られることが明らかになった。<BR> <BR> 【参考文献】 秦 洋二(2005)取次会社との関係からみた書店チェーンの立地展開-福岡県を事例として-,経済地理学年報,51-4,pp.387-405

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680668765952
  • NII論文ID
    130007014328
  • DOI
    10.14866/ajg.2007f.0.1.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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