房総半島諸河川の河川特性

書誌事項

タイトル別名
  • A study on the characteristics of rivers in Boso Peninsula

説明

I はじめに<br>  千葉県において、利根川水系の一級河川については、水文水質の観測が定期的に行われている。一方、千葉県には2級河川以下の小規模な河川が多数存在するものの、それらの諸河川についてはそのような観測はあまり行われていない。そこで、本研究では特に房総半島の南部地域において、房総丘陵を流下する諸河川の水環境や河川特性を把握することを目的とする。<br> II 調査地域概要<br>  千葉県は標高が低く、県全体に低平であることが特徴的である。半島の南部から北部へと標高が低下し、大部分が標高200m以下となっている。最高峰の愛宕山は408.2mで、都道府県最高峰として最も低い山である。南部の房総丘陵は谷が深く、現在も隆起を続けている。激しい隆起が急伸で複雑な谷系を作り出したのである。代表的な河川は小櫃川、養老川、小糸川、であり、河川延長は長く流域面積も大きくなっている。南部域ほど河川延長が短く、また流域面積も小さくなる。<br> III 研究方法<br>  2009年5月23日から24日の2日間にわたり房総半島南部域の合計88地点において現地水文観測を行った。それ以外に小櫃川、養老川、小糸川、一宮川においても同様に観測を行なった。観測項目は、水温、EC、DO、TURB、TDS、pH、RpH、流量、アルカリ度である。これらの現地調査結果を図化することで、空間的分布の特徴を視覚的に表現した。ECに関しては、選定した調査地点の下流域では海水の遡上が見られ、1000μS/cm以上の地点が数多く存在したため、上流側へと地点をシフトし、再び観測を行なった。また、現地調査時にDO値が高い場合にpH値も高くなるという傾向が見られたため、pHとDOの相関について検討を加えた。諸河川全体の特徴を把握し、考察を加えた。<br> IV 結果と考察<br>  ECに関しては上流域下流域とも、全体的に高い値を示した。房総半島では源流域と河口域までの距離が短く、上流域まで人的影響が大きいためこのような結果が得られたと思われる。pH値も高めの値を示し、全体的にアルカリ性よりであった。pH値が高めに出たのは、地質的要因がある一方で、調査中に見られた風送塩の影響も大きいものと思われる。<br> pHとDOの相関は相関係数r=0.6041となり、かなりの相関があるといえる。光合成によってCO2が取り込まれ、水中の重炭酸イオンが減少することで、pH値が高くなり、光合成によるO2の排出によりDO値が高くなると考えられる。また、pH値が高めに出たのは、調査中に見られた風送塩の影響も大きいものと思われる。<br> V おわりに<br>  本研究では房総半島の諸河川における河川特性について、現地調査のデータをもとに考察を加えた。今後は最下流域だけではなく、より詳細に調査地点を選定し、南房総全域を密にカバーする研究を進めていく必要がある。また、各河川ごとに流域特性をとらえる必要がある。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680668918784
  • NII論文ID
    130007014568
  • DOI
    10.14866/ajg.2009f.0.143.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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