東京大都市圏における駅の乗降客数の分布に関する分析

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Distribution of Passengers Using Train Stations in the Tokyo Metropolitan Area

この論文をさがす

抄録

_I_.はじめに 財城ほか(「日本における居住地の分布と地形との関係_-_GISを利用した市町村単位の考察_-_」日本地理学会2005年度春季学術大会;CSIS Discussion Paper #68、2005)は、人口の分布と自然環境との関係を、デジタル空間データを用いて分析した。この研究では、市町村単位で標高や傾斜といった地形条件と居住との関係を明らかにすることによって、居住地の自然地理学的特徴を,従来よりも詳細に解明することができた。本研究では、駅の乗降客数のデータを新たに導入し、GISを利用した居住地と自然環境との関係を、通勤等の要素も考慮して検討するための予察的な作業を行った。対象地域の範囲は東京大都市圏とした。ただし、人口の分布とは異なり、駅を利用する交通流動は必ずしも駅周辺の居住者数を反映していない。一方で通勤・通学圏における昼夜間人口差のある程度の部分は、駅の乗降客数に反映されている実質的な移動数として算定可能である。さらに駅前の地価や各駅の都心部からの距離および時間は、乗降客数との対比を通じて東京大都市圏内の都市構造の一つとして位置づけられる。このような理由により、駅を単位とする分析を進めた。_II_.データと研究方法 駅の乗降客数は各鉄道会社発表のものに加え、地方自治体の統計書にも収録されている場合がある。これらのデータは、_(株)_エンタテインメントビジネス総合研究所編集・発行の『東京大都市圏 京阪神圏 駅別乗降客数総覧』にまとめられている。東京大都市圏ではJRおよび私鉄の1558駅の乗降客数(1日当たり平均)が収録されている。GIS上でこれらの駅のポイントデータを作成し、乗降客数に加えていくつかの属性データを入力した。まず国税庁の作成した路線価図から駅前の地価を読み取った。ただし、調査地域の周縁部にある約250駅については、路線価が不明等の理由により分析から除外した。次に山手線を都心部の外周と仮定し、山手線の最寄り駅からの距離と時間を時刻表から算定した。山手線およびその内部の路線の駅は、都心部の中にあるとみなして作業から除外した。_III_.結果と考察 駅の乗降客数と駅前地価はほぼ比例しているが、地価の高い都心部の駅のいくつかで乗降客数がやや少ない傾向がみられた。また、乗降客数と距離および時間の相関を比較した場合、時間との相関の方が高かった。これは利用客のニーズからしてみれば妥当な結果であろう。地価を距離と比較した場合、中心から離れていてもいくつかの地価の高い駅があった。これらは都市構造としては二次的中心として理解できる。ただし、GISを用いて駅の乗降客数の分布図を作成すると、大都市圏中心部からの階層構造と並んで主要路線網に含まれない駅の空隙部分が浮かび上がった。このことは、距離や時間のほかに、自然環境の要因が乗降客数の分布を間接的に規定していることを示唆している。この仮説の妥当性を、地形データを用いて検証中である。_IV_.まとめ 既存の大都市圏の研究(たとえば都市経済学による土地市場や住宅立地の分析)に対して、GISを用いて居住、交通流動および自然環境の相互関係を明らかにする視角は、都市圏に関する経験的理解を促進するであろう。本研究はその第一歩である。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680669152000
  • NII論文ID
    10020532563
  • NII書誌ID
    AA1115859X
  • DOI
    10.14866/ajg.2006s.0.160.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ