東京都における都市農業経営と農地転用との関係

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  • Relation of agricultural management in urban area

抄録

研究目的1990年代以降、食糧自給率の低さや輸入食品の安全性への不安から国産農産物が注目され、その一方で環境問題から農地の緑地としての機能に着目されるなど、日本国内の農業は農業生産、非農業生産の双方の視点から保全を求められてきた。特に公園緑地の少ない都市地域では、景観維持や農地の公園緑地としての機能などの多様な機能があげられ、保全の必要性が強調されている。<BR>これまでの地理分野における農業の研究は、産地の形成や衰退の過程、農村の地域変容、農業の持続性、多変量解析を用いた農業経営の類型化など多岐にわたって行われてきた。しかし、広範囲の地域を対象として、実際に農地がどこにどれだけ分布しているか、どのような用途に転換されてきたか、どのような農業経営のもとで農地が残存または減少してきたかという研究はあまり行われていない。そこで本研究では、残存する農地と転用された農地の分布と農業経営との関係を明らかにするため、GISと多変量解析を用いて都市地域で農地転用が行われる条件を定量的に特定することを目的とする。<BR><BR>研究方法と使用データまず、10mメッシュ細密数値情報を農業集落単位で集計し、農地の残存と他の土地利用への転換を把握する。次に、1975年、1985年、1995年、2000年の農業集落カードデータを用いて農業集落単位で多変量解析を行うことによって定量的に農業経営を分類し、その経年変化を明らかにする。両者の分布の特徴と類型ごとの集計から、農地の残存、転用と農業経営との関係を考察することによって、定量的な手法から農地の残存しやすい条件、転用されやすい条件の特定を試みる。<BR><BR>解析結果細密数値情報から農地転用の特徴をみると、鉄道路線の沿線の集落に宅地への転用が目立つ一方で、商業用地や工業用地への転用は、主要道路周辺の宅地への転用が少ない集落で行われている。次に、農業経営を定量的に分類するため、農業集落カードのデータを用いて解析を行った。まず、規模、就業形態、労働力、農地利用に関する21変数について主成分分析を行った。得られた主成分得点を用いてクラスター分析を行い、東京都の農業経営を7つの類型に分類した。その結果、1975年、1985年には畜産や雇用兼業が比較的多く見られたのに対し、1995年、2000年になると都心から離れた地域では高齢化が進み、都心に近い地域では自営兼業農家が増えるという経営形態の移行がみられた<BR>最後に、細密数値で集計した農地転用情報を多変量解析による区分に基づいてさらに集計した結果、農地の転用と農業経営形態の関係について次のような特徴が見られた。<BR>1975年_から_95年では類型による減少率の差異は認められなかった。しかし、転用後の用途についてみると、自営兼業地域では宅地への転用が多く、雇用兼業地域では商業用地への転用多いなどの特徴がみられた。細密数値情報が1994年までであるため、1995年_から_2000年については農業集落カードの農地減少率のとの関係だけにとどめざるを得ないが、都心に近く比較的規模の大きな経営形態における農地減少は少ない一方で、高齢化した地域だけでなく自営兼業が行われている地域での転用が多いという差異が確認できた。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680669239296
  • NII論文ID
    130007014980
  • DOI
    10.14866/ajg.2003f.0.185.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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