市場経済導入初期におkる中国国内人口移動の空間分布及び要因分析
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- 劉 晨
- 日本学術振興会 国立環境研究所
書誌事項
- タイトル別名
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- Spatial Distribution and Major Reasons of the Internal Population Migration in the Early Age of Introducing Market Ecomonic System in China
説明
1. はじめに中国では、1958年に発表された「中華人民共和国戸口(戸籍)登記条例」以来、農村から都市への移動は厳しく制限されてきた。その後、“改革・開放”政策(1978年)の実施、人民公社の崩壊(1982年)、戸籍制度の緩和(1984年)などにより、余剰労働力が顕在化した農村地域から労働力不足の都市地域へ人が流れ込むようになった。第三、四回人口センサスによると、移動人口は1982年の657万人から1990年の2135万人まで、3.25倍に増加していた。本研究では人口移動の実態を解明する最初の一歩として、人口移動に関するデータベースを県単位で整備するとともに、1985_から_1990年における人口の移入・移出の空間分布を把握する。また、省内・省間及び遷移((戸籍の移動を伴う移動)・流動(戸籍の移動を伴わない移動)別の移動者特性、移入数及び空間分布を県レベルで明らかにし、さらに、人口移動の要因を解明することを目的とする。2. 研究の流れ研究の流れを図1に示す。3. 結果中国国内では1985_から_1990年の5年間の移動率は3.18%であった。中国政府の三大直轄市である北京市、天津市、上海市の市区や主要な工業都市である武漢市、成都市、重慶市や“改革・開放”が進んだ広東省の深圳市、広州市、宝安県、東莞市などが、その主な目的地であり、出発地はその周辺に分布する(図2)。また、省内移入は省間移入より多く、総移入者数の7割弱を占めた。流入者数は遷入者数より下回るものの、総移入者数の半数弱を占めた。省間移入は、北京市、天津市、沿海部に位置する珠州デルタ、長江デルタ、山東半島、遼東半島に多く見られる。一方内陸の主要大都市や、工業地域、“改革・開放”主要地域、鉱区などでは主に省内の人口を吸収する。さらに、流動者では、出稼ぎのため、経済発展の高い地域あるいは経済発展見込みの高い地域へ加工業や、建築業や製造業などの工場に従事する労働者が最も多く、遷移者では、上級行政区大学・専門学校へ進学する学生、あるいは、上級行政区への転職者が多い。なお、移入量はGDPとの相関係数は0.81であり(図3)、地域の経済力に大きく左右され、国の政策などにも影響されていることがわかった。4. 考察現在の戸籍制度が存続する限り、遷移人口の変化は少ないと思われるが、流動人口は経済の発展により年々増加していくであろう。第五回人口センサス(未公表)などの最新データによる人口移動の現状及び変化などの把握、モデル構築による人口移動の将来予測などの研究を今後の課題にしたい。
収録刊行物
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- 日本地理学会発表要旨集
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日本地理学会発表要旨集 2003f (0), 23-23, 2003
公益社団法人 日本地理学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680669246720
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- NII論文ID
- 130007014996
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可