地方圏における情報技術者の移動と技術水準

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タイトル別名
  • Migration and skill level of IT engineers in peripheral areas

抄録

1.目的厳しい経済環境の中で,情報サービス産業は依然として地方圏の新しい経済基盤しての期待を背負っている.ソフトウェアをはじめとする情報材の生産では,情報技術者の技術水準が生産効率やアウトプットの質に色濃く反映される.したがってある地域における情報サービス産業の発展は,十分な技術水準を持った情報技術者の獲得可能性にかかっていると言っても過言ではない.中澤(2002)では,九州における情報技術者の移動や職業キャリアについて分析したが,情報技術者の技術水準は把握していなかった.本発表では,北海道・東北に立地する情報サービス企業の従業員を対象に行ったアンケート調査を元に,情報技術者の技術水準を労働力の地域間移動と関連づけて分析する.2.調査の概要調査対象はNTTインターネットタウンページにおいて,「インターネット関連サービス」と「ソフトウェア業」のいずれかに登録があり,北海道と東北各県に立地する3,095事業所の従業員である.従業員に対する調査票は,一つの事業所に対して3通配布し,ソフトウェア業の従業員572人とインターネット関連サービス102人から回答を得た.技術レベルは,日本労働研究機構(2000)に倣い,「アシスタト技術者」,「一人前の技術者」,「プロジェクトリーダー」の3つの技術レベルを設定し,対象者に自分が合致するものをそこから選択してもらった.それぞれの定義は,順に「一人前以前の養成段階にある技術者」,「技術的に情報処理試験第_I_種程度の知識ノウハウを有する技術者」,「一人前の技術者以上の高度な専門的知識を有し,なおかつ管理職相当以上の技術者」とした.3.分析結果 札幌は北海道一円から,仙台は東北一円から,それぞれ多くの情報技術者の流入を見ている.一方札幌以外の北海道や仙台以外の東北では,情報技術者のほとんどは地元出身者である.勤務先地域別に技術レベルを見ると,札幌が最も高く,仙台はそれ以外の東北諸地域と比べても技術レベルが高いとはいえない.さらに地域ごとに情報技術者の移動歴ごとに技術レベルを見ると,北海道では札幌に流入してきた情報技術者が最も高く,札幌以外の北海道の出身であり,かつそこで働いている者において低い傾向が明瞭である.ところが東北では,移動歴ごとの技術レベルの格差が小さい.すなわち札幌は,周辺地域から技術レベルの高い人材を集め,情報サービス産業を発展させてきたと考えられる.逆に札幌以外の北海道にとっては,札幌に技術レベルの高い人材を奪われていると捉えることもできる.技術レベルの高い人材は,成長性が高い地域へと流出する傾向があるが,そうした現象をどう評価するかについても発表の場で議論したい.〈文献〉中澤高志2002.九州における情報技術者の職業キャリアと労働市場.地理学評論75,837-857.日本労働研究機構2000.『情報産業の人的資源管理と労働市場』日本労働研究機構.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680669289600
  • NII論文ID
    130007015084
  • DOI
    10.14866/ajg.2003f.0.34.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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