東北地方における飼料コンビナートの立地展開

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  • Development of Feed Combinat in the Tohoku district

抄録

_I_.問題の所在本研究では、港湾における工業開発の縮小や船舶の大型化が進む中で、地方の港湾整備による工場立地とその後背地産業との関わりは如何なる状況にあるのかという問題意識のもと、地方の港湾整備と後背地産業の発展が有機的に結合した事例として東北地方の配合飼料産業を取り上げた。飼料産業は、比較的大規模な港湾施設を必要とし、大都市近郊から遠隔地への養鶏・養豚などの中小家畜飼育型畜産業地域の移動に伴い、主に南九州地方や東北地方などの太平洋ベルトからはずれた港湾に展開してきた。飼料市場の発展において、従来から飼料産業が展開していた南九州地方に対し、東北地方では、飼料供給の他地域依存が飼料産業の立地により解消され、飼料市場が発展した。本研究では、対象地域における飼料市場の動向、飼料産業の立地動向や経緯の他、港湾と飼料工場との関わりとして、港湾施設規模の差、輸送に用いられる船舶の発達、飼料主原料供給経路の変化といった交通地理学的視点にも立ち、それらの関係を横断的に述べ、地方の港湾整備が後背地産業に与える影響を実証的に論じるものである。_II_.結果東北地方の県別配合・混合飼料生産量と消費量の推移から、この地方における飼料市場の時代区分を3期に設定できた。各期における飼料産業と港湾施設の関係について、以下の特徴が明らかとなった。(1) 萌芽期:市場が発展の萌芽期にあたった1970年代までは、臨海単独立地内航船搬入型工場や内陸立地型工場の進出がほとんどであった。1970年において、全穀物貿易量の89%が4万D/W級未満の船舶で輸送されており、石巻港で1969年に稼動した飼料コンビナートでは15,000D/W級岸壁を利用している。当時の国策上の背景も受けて、全購連などが主体となって石巻飼料コンビナートを整備したが、港湾施設や構成工場数はやや小規模であった。しかし、東北地方における飼料原料中継基地として機能し、従来は関東地方からの陸送もなされていた飼料の輸送状況を大きく改善させるなど、畜産業の発展に広域的に作用したといえよう。なお、石巻港にはコンビナート構成工場と臨海単独立地内航船搬入型工場が混在している。また、内陸工場への原料輸送手段は鉄道が主であった。(2) 拡大再編期:1980年代以降はコンビナート形式での工場立地が主となり、1980年代前半には商社主導で八戸飼料コンビナートが整備された。八戸飼料コンビナートには、サイロ1企業とコンベアで直結された5工場がほぼ一括して立地した。5万D/W級対応の港湾施設を備えた八戸飼料コンビナートが稼働を開始した1980年代中頃においては、全穀物貿易量の40%強がパナマックス級以上で運ばれ、約60%がハンディ級以下によった。八戸飼料コンビナートの稼動により、潜在的飼料需要のあった北東北地方において中小家畜飼養を主とした大規模畜産業が発達した。それは、石巻飼料コンビナートや各地の系統工場を中心として形成されていた従来の東北地方の飼料市場に広域的な再編と拡大をもたらすものであった。(3) 停滞期: 1991年に稼動した釜石飼料コンビナートは、パナマックス級に対応した新日鐵釜石工場の既存の港湾施設を利用して稼動を開始したものの、1990年代以降の全国的な飼料需要の停滞により後背地への影響は局地的なものに留まっている。穀物輸送船は引き続き大型化の傾向にあり、1996年においてパナマックス級以上が全穀物貿易量のおよそ58%を運び、パナマックス級未満で運ばれたものは42%と減少傾向にある。また、鉄道による内陸への原料供給は輸送費などの問題で自動車輸送へと転換された。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680669294592
  • NII論文ID
    130007015095
  • DOI
    10.14866/ajg.2003f.0.35.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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