退耕還林政策に伴う中国・黄土高原の土地利用変化と農村経済

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Land-use change and rural economy under the 'Grain for Green' project in Loess Plateau, China
  • A case from Ansai, Shanxi Province
  • ─陝西省安塞県の事例─

抄録

中国の退耕還林政策は、黄河や長江の上流域における生態系回復・保全と農村開発を目指し、西部地域開発の一環として2000年前後から実施されている巨大な国家プロジェクトである。この政策の実施地域においては、原則として傾斜25度以上の農地を放棄させるとともに家畜の放牧を禁止し、放棄地に植林地とし、2010年までに総面積3200haもの新規造林を目標としている。新規造林地の管理主体は農民であり、放棄された農地面積に応じた食料補償を受け取るとともに、植林地の管理料を受け取って造林をまかされる。地域ごとに段畑の造成や現金作物栽培のための財政補助をおこなうなど、環境保全だけでなく貧困世帯が多いとされる農村経済開発を目標とするところに、この政策の特色がある。対象地域の生態系回復・保全を持続的に達成することができるか否かは、管理主体である農民の生活を改善できるかにかかっているものと考えられる。<br>  本報告の目的は、黄土高原の一農村(陜西省安塞県北宋塔村)を事例としてとりあげ、プロジェクト期間の半ばを過ぎた退耕還林プロジェクトについて、生態系変化(土地被覆)と農村経済変化の両側面から検証をおこなうことである。報告者らは、衛星画像の分析によって退耕還林前後の時期における土地被覆の変化を検証するとともに、退耕還林政策実施期間の半ばを過ぎた2005年から2007年にかけて、事例となる一農村において集約的な土地利用・世帯経済調査を実施した。報告においては、これらの結果を提示することによって退耕還林政策の実施経過を明らかにするとともに、政策の効果と問題点を議論する。農村経済の側面においては、世帯経済の実態とともに、大規模な段畑造成、換金作物栽培のためのビニールハウス栽培の奨励などが本報告における議論の鍵となる。また、土地利用調査の一環として、この地域の伝統的な生業であり現在でも農民の生活の基盤であるアワ・キビ栽培についても、その詳細を報告する。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680669438208
  • NII論文ID
    130007015283
  • DOI
    10.14866/ajg.2009f.0.113.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ