インドシナ半島における冬季モンスーン時の降水の季節進行
書誌事項
- タイトル別名
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- Seasonal march of rainfall during winter monsoon season over Indochina
説明
1.はじめに<BR> 中部ベトナムでは1年のうち、10月頃に降水量が多くなることが知られている(図)。その理由は、冬季モンスーンがAnnam山脈に吹き付けることにより、地形性降雨が発達するためと考えられるが、冬季モンスーンは12月も卓越しているのに対して、降水量は少なくなる。なぜ降水量が減少するのか非常に興味深い。<BR> また、近年は中部ベトナムで豪雨災害が頻発している。Yokoi and Matsumoto(2008)は、南シナ海上でコールドサージと熱帯低気圧が互いに影響を及ぼしあい、暖湿な空気がAnnam山脈に吹き付けることによる地形性降雨の発達が、中部ベトナムに豪雨をもたらす機構の一つであると論じた。<BR> 以上のことから、冬季モンスーンに伴う降水の季節進行とその要因を明らかにすることは、将来的な水資源の活用や、防災システムの応用に貢献できると考える。そこで、本研究ではインドシナ半島東部における降水の季節進行とその要因を明らかにする事を目的とする。<BR> 2.資料<BR> データは中部ベトナムダナンにおける1979年~1998年の日降水量を用いた半旬平均降水量と、長期再解析データJRA-25を用いて月平均した(1979年~2004年)気候値(鉛直積算水蒸気フラックスと、925hPaの風)を使用する。<BR> 3.結果と今後の予定<BR> 降水をもたらす原因を探るため、水蒸気フラックスの解析を行った。その結果、10月にインドシナ半島には南シナ海から多くの水蒸気が輸送されていることがわかった。この時期は中部ベトナムのダナンにて降水量が多くなる時期と対応している(図)。12月から1月にかけては水蒸気輸送が卓越する領域は徐々に南下し、中部ベトナム(北緯16°付近)においては水蒸気フラックスが減少した。それに伴って降水量も減少するものと考えられる。<BR> また、インドシナ半島ではモンスーンに伴う降水に加えて、熱帯擾乱によっても多くの降水がもたらされる。Takahashi and Yasunari(2008)は、 9月のタイにおける降水量の68.5%は熱帯擾乱によってもたらされると報告している。今後は、熱帯擾乱がもたらす降水量の割合を見積もり、その季節変化や地域差を把握し報告する予定である。<BR> 文献<BR> Takahashi, H.G., and Yasunari, T. 2008. Decreasing Trend in Rainfall over Indochina during the Late Summer Monsoon: Impact of Tropical Cyclones. Journal of the Meteorological Society of Japan Vol.86: No.3, 429-438<BR> Yokoi, S., and Matsumoto, J. 2008. Collaborative effects of cold surge and tropical depression-type disturbance on heavy rainfall in central Vietnam. Monthly Weather Review 136: 3275-3287.<BR>
収録刊行物
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- 日本地理学会発表要旨集
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日本地理学会発表要旨集 2009f (0), 136-136, 2009
公益社団法人 日本地理学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680669463552
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- NII論文ID
- 130007015305
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可