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Place of Memory : Memorials for Disaster of The 1783 Eruption of Mt.Asama
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- OURA Mizuyo
- Graduate Student, Ochanomizu University
Bibliographic Information
- Other Title
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- 天明3年浅間山噴火災害の記憶の場所-石造物造立と供養祭-
Description
本発表は、過去に大規模災害を経験した地域において、その記憶が現在どのように伝承されているかを、場所に着目し考察するものである。<BR> 天明3年(1783)の浅間山噴火は、広範囲に多大な被害をもたらした。噴火による降灰が田畑を埋め、中山道を寸断した。旧暦7月8日に発生した岩屑なだれは、現在の群馬県嬬恋村鎌原地区をほぼ壊滅させた。さらに、二次的に発生した泥流が吾妻川・利根川沿いの人や馬や家を押し流し、集落を泥で埋めたのである。現在もその痕跡を至る所で目にすることができ、残された様々な史資料が災害の経験を伝えている。<BR> この噴火災害に関連する石造物は、文献調査で判明するだけでも100基ほど存在する。群馬県を中心として埼玉県や東京都などにも所在し、数基が集中する場所もある。石造物に刻まれた年月日は、全てが造立年を示すとは限らないものの、およそ三分の一が災害直後の天明3年から4年である。他には三回忌や三十三回忌などの回忌年が多く、二百回忌の昭和57年(1982)には6基が造立されている。銘文の内容からは、死者を弔う慰霊碑、災害の事実を後世に伝える記録碑、救済者を称える顕彰碑、などの意味合いを読み取ることができる。その中でも特に慰霊碑は、吾妻川・利根川沿いに多く分布する。<BR> 嬬恋村鎌原地区の観音堂近辺には、20基もの石造物が存在する。鎌原観音堂は、石段15段と共に被害をまぬがれた場所である。戒名を刻む墓碑や供養碑などの他、二百回忌には高さ5mの供養観音像が祀られ、その後も和讃や謝恩の碑が造立されている。現在は観音像前で供養祭がおこなわれ、2004年も8月5日に「浅間押し二百二十二回忌供養祭」が開催された。8月5日は、旧暦7月8日を新暦で読み替えた日である。祭では獅子舞や轟太鼓が奉納され、読経や焼香に続き和讃が詠われる。<BR> 伊勢崎市戸谷塚町地区には天明4年に祀られた地蔵の他、百八十回忌に2基、二百回忌にも2基の石造物が造立されている。戸谷塚町は利根川沿いに立地しており、天明3年の災害時には河原に多数の遺体が打ちあげられた。その供養のための地蔵は当初川岸に所在したが、大正初年の耕地整理により現在は観音堂境内に移されている。供養祭は、昭和37年(1962)に百八十回忌を記念した碑の造立とともに始められた。碑には約700人の遺体を村総出で埋葬したことなどが刻まれている。供養祭は旧暦10月9日の観音縁日に観音堂境内でおこなわれ、2004年は11月20日に開催された。祭では嬬恋村鎌原地区から観音堂奉仕会の会員が来て和讃を詠う。これは、上流で泥流に流された人が下流で打ちあげられたことによるという。<BR> このように、現在供養祭がおこなわれているほとんどの地域では、新しく石造物が造立されている。また、供養祭には鎌原地区の観音堂奉仕会会員が出向き、和讃によって災害の悲惨さや供養の由来などを伝えている。<BR> 石造物の所在する場所は、災害を伝承するうえで重要な場所である。その場所で毎年繰り返し供養祭がおこなわれることで、地域の人々は災害の記憶を再認識する。そして、その場所に新しく石造物を造立することで、場所の意味がより強められている。多数の石造物の存在と供養祭の相互作用により、災害の記憶の場所が形成され意味づけられていると捉えることができよう。
Journal
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- Proceedings of the General Meeting of the Association of Japanese Geographers
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Proceedings of the General Meeting of the Association of Japanese Geographers 2005s (0), 116-116, 2005
The Association of Japanese Geographers
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Keywords
Details 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680669550720
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- NII Article ID
- 130007015369
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- Data Source
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- JaLC
- CiNii Articles
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- Abstract License Flag
- Disallowed