The Condition and Transformation of "Barrack Towns" in Postwar Tokyo City
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- Motooka Takuya
- Osaka City University
Bibliographic Information
- Other Title
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- 戦後東京都区部におけるバラック街の状況と変容
Description
1.はじめに これまでのわが国戦後のスラム研究では、建築・都市計画的な観点から、改善された地域に視点が当てられており、必ずしも全てのスラムとされた地域(不良住宅地区)が扱われてきたわけではなかった。特に、戦後日本の都市において居住貧困層が集まったバラック街は研究対象になることは少なく、その状況や現在までの変容については明らかになっていないことが多い。すなわち、これはわが国のスラムに対する実践・研究双方において、資本主義的都市発展を支える産業基盤整備を中心とした都市整備的な観点が重視され、居住貧困層を支える居住福祉という観点は軽視されてきたからと考えられる。こうした問題意識のもと、発表者は既に神戸市をフィールドに、バラック街の形成からクリアランスまでのプロセスについて明らかにしてきた。しかし、そもそもバラック街が戦後都市の中でどのような状況で、社会的、地理的にどのような位置づけであったかは明らかにしていない。そこで本発表では、1958年に東京都民生局が作成した『東京都地区環境調査』を利用し、この課題に取組む。加えて戦後バラック街の状況とその後の変容との関係性を実証的に明らかにしていく。<BR>2.戦後不良住宅地区の形成 太平洋戦争時,度重なる米軍の空襲や空襲疎開によって、東京都の住宅は戦前に比べ、約100万戸減少した。このように戦災により多くの住宅が失われたことで、大量の戦災者や外地からの引揚者は住む所がなく、不定住貧困状態 となった。ここでの不定住貧困状態は大きく二つの様態に分類できる。一つは、街頭に投げ出され都市の盛り場や駅前に寄生して生活する「浮浪者」で、もう一つが、戦災跡に出来た「壕舎・仮小屋(バラック)生活者」であった。戦後復興の中、行政の保護により「浮浪者」が減少していく一方で、仮小屋生活者はその後むしろ増加し、ある一定の場所に集まることでバラック街が形成されることとなった。なお、バラック街のほかにも、例えば、非戦災地域における一般住宅の集団的老朽化、簡易旅館街(ドヤ街)における集団的環境不良化、旧軍用施設ないし工場、倉庫を応急的に転用した低家賃都営住宅、引揚者定着寮等の荒廃化などを、戦後都市の不良住宅地区としてあげることが出来る。このような戦災による被害と共に、その後の急激な都市化の中、大量の人口流入のあった東京都では、他の都市に比べて不良住宅地区問題は非常に深刻であった。1950年代後半になると、量的な意味での住宅難は徐々に解消されつつあったが、質的な意味での住宅問題として「不良住宅地区=スラム」が相対的に深刻化しはじめた。こうした状況に対して、東京都民生局総務部調査課は福祉事務所の協力のもと、1957年11月に大規模な調査を実施し、東京都区部で231の不良環境地区を選定した。<BR>3.分析対象・方法 本発表では、『東京都地区環境調査』のデータを再検討することで、当時の不良環境地区におけるバラック街の状況を明らかにする。現在、バラック街とは、不法占拠の仮小屋集団地区とみなされることが多いが、当時のデータを見たところ、全不良環境地区231地区のうち仮小屋地区は71、不法占拠地区51であるが、そのうち一致するものは35で、仮小屋地区と不法占拠地区は必ずしも一致していないことがわかる。また一方、バタヤ地区31のうち28地区が仮小屋地区に分類することができ、その関係性は強いことがわかる。したがって、本発表ではバラック街を仮小屋地区、不法占拠地区、バタヤ街に分類される計90地区と設定し、それらを分析対象とする。データを読み解く際には、バラック街が当時の社会の中でどのような位置づけであったかに留意し、他の不良環境地区との比較を行う。加えて、発表者はこれらの地区の現在までの変容との関連性を明らかにする。全不良環境地区231地区の変容については、既に高見沢・洪(1984)が分析しているが、バラック街の特有性を示しているわけではない。本発表では、住宅地図と空中写真によりバラック街の現在までの土地利用の変遷を辿ることで、バラック街の変容過程を示し、その特徴と背景を明らかにしたい。<BR>〔参考文献〕高見沢邦郎・洪 正徳「1959年調査による東京区部不良環境地区のその後の変容について」都市計画別冊、1984、85-90
Journal
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- Proceedings of the General Meeting of the Association of Japanese Geographers
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Proceedings of the General Meeting of the Association of Japanese Geographers 2006f (0), 58-58, 2006
The Association of Japanese Geographers
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Details 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680669559936
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- NII Article ID
- 130007015389
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- Data Source
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- JaLC
- CiNii Articles
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- Abstract License Flag
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