千葉県大多喜町における人為攪乱と自然的要因の竹林拡大に対する影響
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- 鈴木 重雄
- 専修大・院
書誌事項
- タイトル別名
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- Effect of human impacts and physical factors on expansion of forests in Otaki, Chiba
説明
1.はじめに<BR>竹林の拡大は、里山の植生変化の一つとして、竹材・タケノコ生産を目的とした植栽や、生産の放棄による管理の粗放化といった人為攪乱の影響を強く受けたものである。しかし、竹林分布の拡大を、人為攪乱の条件と地形条件、植生条件などに着目して、多面的に検討したものは少ない。そこで本研究では、首都圏有数のタケノコ生産地である千葉県大多喜町平沢集落において、全国的に竹林拡大の中心となっているモウソウチク林を中心とする竹林分布の変遷を把握し、その変遷の背景となった要因について、竹林が拡大した場所の植生条件、地形条件、人為攪乱の三つの観点から明らかにした。<BR><BR>2.調査地域と方法<BR>房総半島中央部に位置する千葉県大多喜町は、年間300tを超えるタケノコを生産している。特に南東部の平沢集落では竹林面積が広く、タケノコ生産も、明治末期から始まっている。1980年代後半以降は、タケノコ生産が衰退しているものの、現在でも生産を継続しておこなっている林家も多数存在しており、管理がなされている竹林と放棄された竹林が混在している。<BR>竹林分布の変遷は、1966年、1974年、1984年、2001年の4時期に撮影された空中写真の判読と現地調査によって作成した植生図によって復元した。そして、竹林拡大の要因を、DEMから求めた斜面方位・傾斜や、尾根・道路・住宅からの距離の各データと、林家からタケノコ生産の状況や管理方法を聞き取り、これらを多面的に検討した。<BR><BR>3.結果および考察<BR>分析の結果、平沢集落における竹林の年間拡大率は、1966年から1974年で1.086倍、1974年から1984年で1.010倍、1984年から2001年で1.023倍と拡大が続いてきた。<BR>落葉広葉樹林や針葉樹林といった植生であった場所で拡大面積が大きく、放棄された畑での拡大も著しかった。一方で、宅地や水田といった現在でも人手が加わりやすい場所では、竹林の拡大が抑制されていた。このように竹林周辺の土地の利用が竹林の拡大に影響を与えていた。竹林の拡大と地形条件の関係は、東向き斜面に竹林が多く存在し、東・南向き斜面で拡大速度が速かった。方位によって林家によるタケの植栽のされ方には差異は見られないことから、モウソウチクの生育が東・南向き斜面でより盛んであると考えられる。また、15°以上の傾斜地に竹林が多く存在し、30°以上の急傾斜地で拡大速度が速かった。緩傾斜地は水田や宅地に利用されることが多いことと、急傾斜の竹林ほど管理の粗放化が生じやすいことの影響を受けて、竹林分布と斜面傾斜の関係がみられたと考えられる。そして、道路から150m以上はなれた場所で竹林の拡大が進んでいた。これは、現在では道路から離れた場所では、生産従事者の高齢化や労働力の不足によって、竹林の管理が行われていないことを示しているといえる。<BR>竹林の拡大は、地形条件に起因するタケの生育環境と、タケノコ生産の放棄や竹林周辺の土地利用といった人為攪乱の強度の変化によって引き起こされていた。斜面方位は環境条件として竹林の拡大に作用し、傾斜度や道路からの距離といった条件は、タケノコ生産林の放棄に影響を及ぼし、集落内での竹林拡大の進み方に差異をもたらしていた。
収録刊行物
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- 日本地理学会発表要旨集
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日本地理学会発表要旨集 2005s (0), 108-108, 2005
公益社団法人 日本地理学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680669562112
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- NII論文ID
- 130007015392
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可