GISを利用した東京大都市圏における地価変動及び地価形成要因の解析

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  • Analysis of Land Value Changes and Factors of Land Value in Tokyo Metropolis Using GIS

抄録

1. 背景と目的<BR>1985年ごろから1990年代前半にかけて土地や株が高騰したバブル経済期に,東京都,千葉県,埼玉県,神奈川県(以下;東京圏)の都市へ人口が集中し,都市周辺の農地・山林地域まで市街地が拡大した。地価は都市の諸環境・諸機能を示す総合値であり(田辺,1951),その時・空間的変動は都市の内部構造を変化させる重要な要因である(脇田,1976)。土地の自然的条件は,居住や生産活動における利便性・快適性・経済性等の条件を規定し,土地の価格評価に影響を与える(水谷,2001)。本研究の目的は,東京圏を対象に地価データから時・空間的な地価変動を明らかにし,大都市及びその周辺を含めた地域の地価形成の実態把握とその要因分析を行うことである。<BR>2. 使用データ<BR>(a)国土交通省の地価公示価格(1983年から2003年),(b)国土地理院50万分の1土地分類図(関東地方),(c)国土地理院数値地図2500(空間データ)の関東鉄道路線<BR>3. 手法<BR>(1)土地利用別の地価変動<BR>地価公示価格データから東京都,千葉県,埼玉県,神奈川県,茨城県,栃木県,群馬県(1都6県)の1983年から2003年まで欠損のない2327地点のデータを使用した。商業地(207地点),住宅地(2028地点),工業地(86地点)と3つに分類した土地利用別の地価変動を解析する。<BR>(2)地形別の地価変動<BR> 土地利用別に分類した地価データを国土地理院の50万分の1土地分類図をベースに低地,台地,丘陵地,埋立地,山地に分類した地形別の地価変動を解析する。<BR>(3) 東京都心からの距離別地価変動<BR> 土地利用別,地形別に分類した地価データを東京大都市圏の都心である東京駅を中心とした6km毎のバッファ(0km_から_90km)を作成し,東京駅からの空間的距離別の地価変動を解析する。<BR>(4)重回帰分析による地価決定要因の分析<BR>地価決定要因の説明変数として,都心(東京駅)からの距離,最寄り駅までの距離,土地利用(商業地・住宅地・工業地),地積,建物構造,地形,水道・ガス・下水の有無,建蔽率,容積率をとりあげ,重回帰分析による地価公示価格の解析を都道府県別に行う。<BR>4. 結果と考察<BR>1983年から2003年までの土地利用別の地価経年変化は,バブル経済期における商業地の地価変動が最も大きい。1983年の商業地平均地価は住宅地及び工業地平均地価の約3倍の価格差があったが,1987年には約6倍と価格差が最大となっている。土地利用別に分類した地価をさらに地形別に分類した地価経年変化は,台地における商業地の地価変動が最も大きい。台地における住宅地の平均地価は1987年までは最も高かったが,1988年以降は埋立地における平均地価が最も高くなっており,1991年に台地と埋立地の価格差が約1.7倍と最大となっている。土地利用別に分類した地価をさらに東京駅を中心とした距離別に分類した地価経年変化は,商業地及び住宅地ともに 1983年から1988年までの地価変動の上昇が東京駅近郊で大きく,距離に比例して地価変動が小さくなる。地価の空間分布から住宅地地価は都心(東京駅)から西及び南西方向へ放射状に高地価が分布しており,郊外(空間的距離が都心から離れるにしたがって)にむかうほど高地価は少ない。しかし,商業地は都心だけでなく郊外にも高地価が分布しており,住宅地の地価形成と商業地の地価形成は互いに独立している。<BR>重回帰分析による住宅地公示地価データの解析を都道府県別に行った結果,都心(東京駅)からの空間的距離および最寄り駅までの距離の2つの説明変数が大きく効いており,全体変数の50%以上が説明でき,交通利便性の地価への影響が大きい。埼玉県,千葉県,神奈川県の住宅地地価は住宅地としての整備水準を示すガス・下水の有無と地形が,都心(東京駅)からの距離,最寄り駅までの距離に続いて地価の説明変数として高い値を示す。しかし,東京都の住宅地地価は地積,建蔽率が都心(東京駅)からの距離,最寄り駅までの距離に続いて地価の説明変数として高い値を示し,居住者が住宅購入の際に最も重要視する居住地の広さが地積と建蔽率に影響を及ぼしている。<BR>5. まとめ<BR>東京大都市圏における住宅地,商業地,工業地の地価経年変化及びマクロな空間分布の特徴について明らかにすることができた。<BR>しかし,地価形成の要因解析に進むには居住地周辺環境の整備が土地利用に与えている影響や居住者の選好の好みもあり,ミクロな解析が必要となるのでGISを利用した研究を進める予定である。<BR>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680669605248
  • NII論文ID
    130007015472
  • DOI
    10.14866/ajg.2005s.0.177.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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