都市の発展と港の再開発

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タイトル別名
  • Urban expansion and redevelopment in port area
  • Cases of Hamburg and Bremen
  • ハンブルクとブレーメンの事例

抄録

<BR> 1.はじめに<BR>  都市と港の関係を考察するにあたって、ハンブルクとブレーメンの事例を比較検討することは、2つの都市の市政府が港を都市の発展という観点からどのように捉えているかを知るうえで興味深い。ハンブルクは、港とともに生きる道を模索し、Hafenstadtと自ら名乗る、いわゆる港湾都市である。一方のブレーメンは、かつてはHafenstadtと呼ばれていたこともあるが、近年ではStadt am StromあるいはÜberseestadtと呼ばれることが多い。ただしこれらには定訳が見当たらない。<BR>  港湾経営に長けたこの2つの都市は、外港をもつことに成功し、さらには、大水深港湾の経営に2010年から乗り出そうとするブレーメンに対し、外港をもたず、大水深港湾の経営に不参加を表明したハンブルクという、対立と競合の関係を呈している。このことは、かつては繁栄の中心であったにもかかわらず、現在では遊休化してしまった港湾地区の再開発への取り組み方の違いともなって現れている。<BR>  筆者はここ数年、継続してこの2都市を研究対象として、港の景観・施設・機能に関する資料の収集にあたってきた。今回は、都市の発展と港の再開発という観点から、両者の特徴を明らかにしてみたい。<BR><BR> 2.ブレーメンの光と影<BR>  ブレーメン市はブレーメン港とともに発展するという道を選択しなかった。ブレーメン港は毎年、取扱貨物量が激減しており、近代港湾発祥の地を含む約400haの旧港地区が再開発地区に指定されている。しかし、ブレーメン市には多面的な都市的土地利用を遂行するにあたってのコンセンサスが欠けていた。それでも、2000年には発展構想が市政府より出され、3年後にはマスタープランも策定された。2010年までにÜberseestadtの理念に基づく再開発が完成の運びとなる。再開発対象地区では、商業施設や業務施設が完成しているところもあるが、まだ、大半は草の茂った荒地のまま放置されており、ここが都市ブレーメンの過去の栄光の地であるという面影は皆無である。港の機能の主力はヴェーザー川の河口にあるブレーマーハーフェンに移っている。ここはドイツ最大の自動車積出港であり、コンテナ貨物の取扱量ではハンブルク港についで、ドイツ第2位の実績を誇る。ブレーメン市に誕生した港湾関連の企業は、本社をすでにブレーマーハーフェン市に移したものもある。首都がベルリンに移転し、ドイツ第2の都市ハンブルクに本社や支社をおいていた企業のなかには、ベルリンに拠点を移す企業が現れたといわれているが、今後、ブレーメン市が再開発地区に中枢管理機能を集積させうる可能性は必ずしも高くないといえる。<BR><BR> 3.ハンブルクの光と影<BR>  1990年代になって、ようやく自由港地区に人が居住することを認めたハンブルクは、これで中世ハンザ時代と同じような港湾都市に回帰することができたと報じた。勿論、中世と現代では、都市構造・港の配置・港湾地区に居住することの意味は異なる。自由港で現在進行中の再開発は、HafenCityと呼ばれ、多くの建築家が競い合う華やかな舞台を提供している。ドイツ最大の港であり、そこで展開されている再開発の規模も群を抜いている。しかし、エルベ川に面し、河口から110kmも上流に位置するハンブルク港には、水深という関門と港の拡大は市民の犠牲なくしてはありえないというジレンマを抱えている。それでも、大水深港湾の建設には参加しないことを決めた市政府は、あくまでハンブルク港とともに生きる道を選択した。<BR><BR> 4.おわりに<BR>  ブレーメンとハンブルクの都市と港の関係についての考え方は対照的である。港の経営は適地にて行うべきであるとするブレーメンの方針は、港の再開発を都市の発展とどう結びつけるかという点で、ハンブルクに匹敵するだけの開発の理念をもたない。豊かな観光資源を有するブレーメンは、ハンザの盟主リューベックのようになるのだろうか。それとも、大水深港湾の経営に成功して、ハンブルクに脅威を与えることになるのだろうか。ヴェーザー川に沿うブレーメン港を早々と見捨てたブレーメン市は、都心に隣接した遊休地のもつ意味とは何かを十分に理解してはいないように思われる。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680669609088
  • NII論文ID
    130007015479
  • DOI
    10.14866/ajg.2006f.0.30.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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