Production and Distribution system of Kiwifruit and Role of Agribusiness Firms in Japan

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  • わが国におけるキウイフルーツの生産・流通とアグリビジネス

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1.はじめに<BR> 今日,フードシステムのグルーバル化が急速に進みつつある.その一翼を担っているのが多国籍企業のアグリビジネスであるが,こうした企業が農産物の輸出入に関わるだけでなく,販売戦略に基づいて輸入国内に産地を形成する事例がみられる.本報告では,このような事例として日本における外国産キウイフルーツのうち大部分を取り扱うゼスプリ社に焦点をあて,その流通の拡大過程とそれに関わる企業の戦略について検討する.キウイフルーツ産業においては企業が消費市場における需要拡大を図るために牽引的な役割を果たしており,その経営戦略を追うことにより,農産物が消費市場へ浸透していく過程を把握できると考えられる.特に,キウイフルーツの新品種「ゼスプリ・ゴールド」に焦点をあてた考察を行う.<BR><BR>2.日本におけるキウイフルーツ輸入拡大とゼスプリ社<BR> 日本におけるキウイフルーツ輸入は,1970年代から本格的に始められ,2002年度における日本への輸入量のうち8割がニュージーランド産である.ニュージーランド国内において生産される輸出用キウイフルーツは,ゼスプリ社によって流通過程が管理され,垂直的統合がなされているのが特徴である.日本へと輸出されたキウイフルーツは,ドール社の流通網を用いて販売されている.それは,ドール・ジャパンがゼスプリ社の総代理店となっているからである.ドール社が,総代理店となった理由はバナナ・パイナップルの販売において大手食品小売業への流通経路を持ち,ニーズの把握や,販売提案力に実績を持っていることが挙げられる.<BR><BR>3.ゼスプリ社による産地の育成<BR> 2000年,ゼスプリ社は,日本市場をターゲットとした新品種ゼスプリ・ゴールドの販売を開始し,同年,日本国内でも栽培をはじめた.この産地は愛媛県にある東予園芸農協の管轄地域である.東予園芸農協管区内の農家は,経営の発展を図るため,高収益性の品目,作型の導入が課題となっていた.その一つの対応がキウイフルーツの導入であり,この他にも柿,梅,ポンカン,伊予柑が導入されている.ゼスプリ・ゴールドを栽培する生産対象農家は,導入当初は32戸,約4haであったが,現在, 130戸,面積は約27haと増加している.ゼプリゴールドが持つ生産の有利性には,ヘイワード種に比較して大玉であり収量が約1.5倍,3年目で結果するので未収益期間が短い,生産量が決められているので生産過剰にならない等が挙げられる.このゼスプリ・ゴールドの採用は,青果物の国際化時代を迎え,海外資本との提携も,国内生産者に有益なら取り入れるべきという東予園芸農協の方針からであった.東予園芸農協から出荷されたゼスプリ・ゴールドは,従来の東予園芸農協の出荷ルートではなく,ゼスプリ社側の流通網で流通されている.キウイフルーツの導入にあたって,東予園芸農協は,愛媛県経済連を介して,ゼスプリ社と,三者契約を結び,ゼスプリ・ゴールドを栽培するためのライセンスを取得した.日本産ゼスプリ・ゴールドは2003年末に販売が開始された.ゼスプリ社側は,ゼスプリ・ゴールドの接ぎ木を生産者に期限付きで貸与し,本国と連携した生産マニュアルの提供,代金回収を含めた販売全般を担当している.このようなシステムのもとで,ゼスプリ社側は冬場の高品質商品の確保を行う一方,東予園芸農協側は新たな商品開発により生産を活性化することを目指している.<BR><BR>4.まとめ<BR> 近年,フードシステムのグローバル化が多国籍企業主導で進められつつある.わが国においても外国産青果物の流通が急増しているが,輸送技術の進展により遠距離輸送が可能となった生鮮青果物の急増が指摘できる.これらの生鮮青果物の多くは日系企業もしくは外資系企業が,海外で生産されたものを日本へ輸入する形をとっている.しかしながら,今回扱った事例は,外資系企業が消費地・日本に一部の産地を移転したケースであり,それらは,低コスト化による経済性の追求を求めて海外へと生産産地が移転していく潮流に逆らい,先進国内に新たな産地形成が行われた事例と捉えられる.こうした事例は未だ多くはないと思われるが,アグリビジネスが主導するグローバルなフードシステムを考える上で,ひとつの材料を提供すると考えられる.

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390282680669621120
  • NII Article ID
    130007015505
  • DOI
    10.14866/ajg.2005s.0.161.0
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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