NAO/NAM にともなう寒候季ユーラシア大陸上の暖気移流の解析的研究
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- 堀 正岳
- 筑波大学、地球科学
書誌事項
- タイトル別名
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- Analytical study of anomalous heat advection accompanying an NAO/NAM signature over the Eurasian continent during winter and spring
説明
はじめに<br><br>北半球の大気の主要モードである北大西洋振動 (North Atlantic Oscillation, NAO) もしくは北半球環状モード(Northern hemisphere Annular Mode, NAM) は、対流圏から成層圏までつながった順圧的な構造をもっており、寒候季に強調されるという特徴をもっている。<br>また NAO/NAM は偏西風の強弱を通して、ユーラシア大陸上の地表面気温に大きな影響をもっていることが知られている。一般的な説明としては、NAO/NAM が正に強調されている場合、大西洋上の相対的に暖かい空気が総観規模擾乱の侵入に対応して大陸に移流し、月平均場でも顕著に見える昇温域を形成すると考えられている。<br>しかし、東西スケールが 6000km 以上にもなるユーラシア大陸上の昇温が西側からの暖気移流だけから成り立っているとは考えにくい。また、冬期ユーラシアの気温の気候値は南北の気温変化に加え、北東に位置する中央シベリア高原に向かう程低くなる顕著な東西構造ももっており、各地域において気温の維持と偏差を生じさせるメカニズムの違いは明確になっていない。<br>また、NAO/NAM と地表面気温との関連においてモンゴルを中心とした春季の温暖化トレンドを検出しやすい傾向があるが、これをトレンドと季節内の変動とを個別に行った研究も少ない。<br>そこで本研究ではまず、NAO/NAM の季節性とトレンドを調査し、それに関連した暖気移流の実態を熱収支解析を通して解析し、地域による昇温トレンドの実態を明確にすることを目的とする。<br><br>データ、解析手法<br><br>米国 NOAA/CDC が配布している NCEP/NCAR 再解析データより、日平均の解像度で SLP、地表面気温、ジオポテンシャル高度、風速、ω風速を、1980-2001 年の期間で使用した。<br>日平均スケールの NAO/NAM インデックスは、DJF 平均の SLP に対する EOF1 の場に対する、日平均場の類似度から算出した。<br><br>結果<br><br>NAO/NAM の日平均スケールの変動において正の極値を選出し、ピーク時の気温アノマリを図(a) に示した。また、ピークに対して 4日後の気温アノマリを図(b)に示した。NAO/NAM に対応する西風偏差に起因する暖気移流によって正の気温アノマリが、西ヨーロッパからウラル山脈付近にむけて移動しているのが見て取れる。中央シベリア高原付近、及び東アジア領域の気温は若干昇温しているものの、西風偏差は小さく、暖気移流とは異なる原因で気温偏差が生じている可能性を示唆している。<br>発表では、熱収支解析の結果も踏まえて、大陸西部と東部における気温偏差の成因の違いと、季節内変動とトレンドを分離した結果について報告する。<br>(図: a) 日平均 NAO インデックスの正の極値に対する地表面気温の合成図。濃い(薄い)ハッチは正(負)の気温アノマリに対応し、等値線は 1度C 毎。b) a) と同様、ただし 4日後のラグに対する合成図。)
収録刊行物
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- 日本地理学会発表要旨集
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日本地理学会発表要旨集 2003f (0), 109-109, 2003
公益社団法人 日本地理学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680669670528
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- NII論文ID
- 130007015606
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可