わが国における木材輸入の変化と外材製材業の展開
書誌事項
- タイトル別名
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- Changes in import of timber and growth of sawmill industry in Japan
説明
1.はじめに<BR> 1964年の木材輸入の自由化以降,わが国の木材輸入量は急増し,外材に依存する状況が定着した。国産材回帰と言われている現在においても,建築用に使用される木材の過半は海外からの輸入木材であり,外材が国内の木材供給に与える影響は大きい。<BR> これまで,地理学や隣接分野である林業経済学においては国内林業の振興という観点もあって,国産材製材の研究が中心であった。したがって,外材に依存しているにもかかわらず,国内における外材製材業の発展や生産システムについて論じた研究は不十分であった。外材製材業を対象とした地理学の先行研究として藤田(1984)は貴重な成果であるが,大型製材メーカーの寡占化が進む前の研究であり,その後の変化は著しい。特に,外材をとりまく環境の変化の中で,外材製材業の立地に着目する必要がある。<BR> 以上より,本研究では,主に統計により木材輸入の変化,外材製材業の発展プロセスを明らかにし,外材製材業においてどのような生産,構造および立地の変化が生じたかについて検討する。<BR> <BR> 2.日本の木材輸入の動向<BR> 図1は1983年以降の日本の製材・合板用丸太の調達量を地域別に示したものである。同図から,大きな特徴として3点を指摘することができる。<BR> 一つ目に,丸太輸入用は1990年代以降減少している。特に,南洋材と米材の減少が目立つ。この要因として,南洋材については資源ナショナリズムの動き,米材ではアメリカ合衆国国内での森林保護の動きと,輸出国側の丸太輸出規制があげられる。<BR> 二つ目は,北洋材の輸入量増加とシェア拡大がみられる。1992年の北洋材貿易の自由化に加え,価格が安いことから,太平洋岸に立地する米材製材工場が北洋材製材を併用するようになったことが要因である。<BR> 最後に,国産材が伐期を迎えつつあり,製材・合板用丸太においてシェアが上昇し,約5割を占めつつあることも近年の特徴であるといえよう。その結果,原料丸太における国産材と外材の競合をみることができる。<BR> 外材の輸入港についても大きな変化がみられた。特に注目されるのは米材丸太の変化である。1995年までは大阪,名古屋,東京などの大都市の港に加えて,清水,和歌山などの木材港の整備された港湾の輸入量が多かった。しかしながら,1995年前後を境に,呉,松永,松山,岩国といった瀬戸内海の港へと米材丸太が集まるようになった。現在では鹿島を加えた上位5港で全体の約75_%_を占めている。この要因として,米材製材メーカーの規模拡大による寡占化が進んだことがあげられる。日本の米材製材メーカーの大型製材工場の立地に伴い輸入港が再編されていった。<BR> 本発表ではこのような外材輸入の変化の下,外材製材業においてどのような生産構造および立地上の変化が生じたかについて,具体的に報告したい。
収録刊行物
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- 日本地理学会発表要旨集
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日本地理学会発表要旨集 2009s (0), 45-45, 2009
公益社団法人 日本地理学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680669810816
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- NII論文ID
- 130007015823
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可