韓国における交通ネットワークの時空間構造

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  • Time-Space Structure of Transportation Network in South Korea

抄録

本研究は,韓国の金融危機(1997年)を中程に挟んだ1990から2005年までの15年間について,同国における交通ネットワークの時空間構造を解明することを目的とし,同期間内の3年間隔や全体で,鉄道および高速バスの時間的な利便性—具体的には時間距離からみた近接度および迂回度—の変化を,日本との比較も交えながら分析・考察したものである.それらの結果を要約すると以下のようになる.<BR> (1) 鉄道ネットワークの時間的な利便性は,1990年以降,韓国中央部に位置する大田周辺,さらには,ソウルから大邱にかけての一帯が高く,そこから離れるに従い,徐々に低下するという同心円的な構造を呈してきた.しかし,2004年のKTX開業によって,その沿線地帯を軸に利便性が飛躍的に高まったため,結果としてソウルに到達する基幹鉄道路線沿いであるか否かによって,利便性の較差が広がり,同心円的な構造が帯状の形状にゆがむこととなった.<BR> (2) 高速バスの利便性は,鉄道の場合よりも同心円的な地域差が明確であった.すなわち,ソウルとのつながりよりも,その場所の位置に利便性が強く左右されたものであった.これは鉄道網がソウルを中心に形成されているのに対して,高速道路網は国土を格子状にカバーするように構想,建設されているのが背景であろう.このような利便性の同心円状構造は1990から2005年を通じて認められる.<BR> (3) 日韓で比較すると,韓国の場合,ようやく最近になって高速鉄道(KTX)登場により鉄道の利便性が飛躍的に向上したが,高速バスは1990年代以前から鉄道と同等の利便性をもつ交通手段として発達してきており,現在でも諸地方都市間をきめ細かく連結する重要な交通手段としての役割を発揮し続けている.これに対して,わが国では韓国とは逆に,早くから高速鉄道(新幹線)が整備されてきた一方,高速バス網は1990年代以降に充実が進むなど,日韓における高速鉄道・バス網の発達は,対照的なプロセスを経て今日に至っている.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680669824768
  • NII論文ID
    130007015852
  • DOI
    10.14866/ajg.2006f.0.107.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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