洪水ハザードマップを用いた図上防災訓練(DIG)の取り組み

書誌事項

タイトル別名
  • Disaster Imagination Game on Flood hazard map

説明

1. はじめに  2005年の水防法の改正にともない中小河川も浸水想定区域の指定河川となり,洪水ハザードマップは全国で数多く作成されている.そして,洪水ハザードマップを事前にみた経験のある人たちはそうでない人たちよりも避難行動を早く開始するので(片田,1999),洪水ハザードマップは防災上一定の効果があることが示されている.この結果から,洪水ハザードマップを市民に広く認識してもらうことが地域防災力を高めることにつながることがわかる.  しかしながら,洪水ハザードマップに対する理解を市民に深めてもらうためにはいくつかの課題がある.ハザードマップの社会における認知度が高くないこと,ハザードマップ上に数多くの情報があるため,地図に親しみのない人たちには読み取りづらく,見ること自体に心的抵抗があることなどがあげられる.  これまで図上防災訓練(DIG)が洪水ハザードマップに対する理解を深める方法の一つであることが指摘されている(大西・廣内・富田,2007).そして,DIGが洪水ハザードマップの理解や親近感を持たせる効果があると発表者たちは経験的に認識している.そこで,本発表では,洪水ハザードマップを用いたDIGの取り組みを紹介するとともに,市民がハザードマップを理解する際に必要なことは何なのかについて検討する. 2. 災害ワークショップ  発表者たちが行った水害のワークショップを紹介する.2004年12月と2008年10月に愛知県天白川流域を対象に災害ワークショップを実施した.2回のワークショップとも,次のように進めた. _丸1_平野の地形と災害の関係性の理解  平野の土地利用が微地形と関係していること,近年は微地形に従わない土地利用が増えてきていることを説明する. _丸2_新旧地形図の比較  _丸1_を体験的に理解するために,参加者の暮らす地域の新旧地形図を土地利用にごとに塗り分け,新旧の地形図を比較する.この体験により,参加者の暮らす地域の土地条件や水害の危険性の高い場所がどこにあるのかが理解される. _丸3_DIGの実施  洪水ハザードマップを用いたDIGを実施する. 3. DIGの運営  DIGを運営する際,まず図上で展開されるシナリオを用意する.次に,そのシナリオを踏まえて,どのように避難行動をすべきかなどを数名のグループで話し合い,意思決定する.  DIGを洪水ハザードマップ上で行うことが多い.ただ,ハザードマップ上で架空のシナリオに従いDIGを行っても,現実の空間で起こる出来事と実感されづらい.しかしながらハザードマップと住宅地図などの大縮尺の地図を用意して,双方を見比べてDIGを実施することで現実の空間とハザードマップを組み合わせられるようになる. また,DIGのシナリオは,刻々と状況が変化することなどを認識できるようなものが望ましい. 4. おわりに  洪水ハザードマップが一般で活用されるためには,まず,自分たちの暮らす地域の土地条件を知ることで水害に対して一定の理解をしてもらう必要がある.それがないと水害に脆弱な場所の存在が理解されない.さらに,ハザードマップを現実空間と一致させるために大縮尺の地図などの活用が必要であろう.  地図に親しみのない一般の人々がハザードマップを読むためには,地形図学習などを含めた地図学習を生涯学習として実施していく必要がある.

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680669856256
  • NII論文ID
    130007015917
  • DOI
    10.14866/ajg.2009s.0.247.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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