天草市宮地岳町における農地維持の諸相

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タイトル別名
  • Aspects of Maintaining Farmland in Miyajidake Town, Amakusa City
  • Roles of Farm Households' Management and Group Farming
  • 個別農家と地域営農組織の役割

抄録

本発表では,中山間地域である天草市宮地岳町を事例に,農地の利用が維持されてきた様相を,「地域営農組織」や個別農家など様々な主体の果たす役割を検討することから明らかにする.とくに,農地利用の主体となる「地域営農組織」や個別農家などが,農業生産を経済活動としての役割に加え,村落社会という枠組みのなかでいかに展開し,当該地域の農地を維持していくうえで,それぞれが果たす役割について注目して検討する.<br><br> 宮地岳町の農地面積は田で107ha,畑で10haとなるが,営農組合が全農地を請け負っていない.2010年現在,営農組合が請け負う農地は24.8haであった.その他の農地は個別農家によって耕作されており,離農農家の農地を周辺の農家が借地・作業受託することによって農地利用が維持されていた.ほとんどの農地貸借は宮地岳町内で行われており,借手と地権者には日常生活上の付き合いがあり,貸借契約のみに限定されたものではないことも貸借契約の継続に寄与していた.地権者としては「家産としての農地」を維持していくためには,耕作放棄地化は望ましいものではなく,貸借契約が解消される際には,それまでの借手が「新たな借手」を確保することを求めていた.現在,町内には少ないながらも専業農家や50歳代以下の農業従事者を有する農家がおり,「新たな借手」となっていた.しかし,新たな借手農家もこれ以上の借地の増大は難しく「新たな借手」は不足している.こうしたなかで,「新たな借手」を確保できない場合に,営農組合が当該農地を請け負っている.また営農組合は請け負う農地のほとんどを転作田とし,転作率を調整する機能も担っている.個別農家は自身の経営内で生産調整を行う必要がなく,全経営耕地に水稲を作付けし,経済活動として水稲作を行うことが可能となっていた.このように,営農組合が土地利用を調整することによって,個別農家の水稲作を中心とした借地経営を可能にし,個別農家と営農組合の双方が農地の受け手となることによって,町全体の農地利用が維持されていた.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680669884032
  • NII論文ID
    130007015972
  • DOI
    10.14866/ajg.2011f.0.100018.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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