北海道北部,利尻火山北麓における古期火山麓扇状地のOSL年代

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • OSL dating of the old stage volcanic fan deposits in north flank of the Rishiri Volcano, northern Hokkaido, Japan

抄録

利尻火山の火山麓扇状地の概要と研究目的<BR> 北海道北部の日本海上に位置する利尻島は,約20万年前以降から数千年前までの間に活動した利尻火山からなる(石塚,1999).利尻火山は,中央部の利尻山(1721 m)を最高峰とする成層火山体と多数の側火山から成り,侵食谷と山麓緩斜面が取り囲む.山麓緩斜面の大部分は火山麓扇状地であり,利尻島の約60%の面積を占める地形面である(守屋,1975).火山麓扇状地は,段丘化している古期火山麓扇状地と,侵食谷底から海岸線まで堆積面がスムーズに連続する新期火山麓扇状地に区分される(三浦,2003).古期火山麓扇状地は主に利尻島の西部と北部に発達している.利尻島西部の古期火山麓扇状地は海岸部において層厚10~15 m程度の砂礫層から構成され,約2万年前前後に主要部が堆積し,完新世初頭に離水したことが報告されている(近藤・塚本,2007).一方で,利尻島北部の古期火山麓扇状地堆積物は厚い堆積物で構成され,野塚溶岩流の周囲や上に堆積している.三浦・高岡(1993)は,野塚溶岩流の直下より約28 kaという14C年代を報告している.本研究の目的は,利尻火山北麓の火山麓扇状地の堆積物を記載とOSL年代測定法に基づき離水年代を推定し,火山活動や古環境の影響を明らかにすることである.<BR> 利尻火山北麓の火山麓扇状地を構成する堆積物の記載<BR> 利尻火山北麓で厚い古期火山麓扇状地堆積物が露出する利尻富士町湾内付近では,層厚50 m以上の扇状地構成物質が利尻火山の基盤をなす第三紀系を不整合に覆う.野塚溶岩流の周囲において観察される古期火山麓扇状地を構成する主な堆積物は,上位より層厚数mの細粒物質に富み葉理が発達する砂礫層(ユニット_I_),玄武岩質スコリアおよび野塚溶岩起源礫を多量に含む層厚約6 mの水成砂礫層と層厚約6 mの降下火砕物層(ユニット_II_),層厚20 m以上の基質が細粒で不淘汰な礫層(ユニット_III_)である.ユニット_I_やユニット_II_上部ではクリオタベーションが観察される.また,ユニット_I_は,厚さ10 cm以内の風成堆積物を挟む場合がある.ユニット_III_には,灰色を呈する玄武岩質溶岩礫が多く含まれ,人頭大以上の礫の多くは自破砕している.ユニット_I_は層厚数10 cm~約1 mの風成堆積物に覆われる.ユニット_II_とユニット_III_の境界部には葉理が発達し植物生痕を含む層厚約30 cmのシルト層が存在する.<BR> 利尻富士町野塚においては,上位から腐植質土壌,風成堆積物,不淘汰な砂礫層,細粒物質に富み葉理が見られる砂礫層(ユニット_I_),玄武岩質スコリア層(ユニット_II_)が野塚溶岩流を覆う.ここでは,ユニット_I_,_II_を断ち割る化石凍結割れ目が存在する.<BR> OSL年代測定法<BR> OSL年代測定法では,堆積物中の石英の最終露光年代を求めることが可能である.利尻火山の噴出物中には石英を含まないが,利尻島の水成・風成堆積物中の微粒子(4~11μm)には石英のOSL信号が確認されているので,微細石英が島外からもたらされた可能性があり,OSL年代測定が適用可能である(近藤・塚本,2007).本研究では,ユニット_II_と_III_の境界に存在するシルト層および風成堆積物から試料を採取しOSL年代測定をおこなった.<BR> 利尻火山北麓の火山麓扇状地の離水年代と発達の成因<BR> 野塚溶岩流上の風成堆積物は約14 kaというOSL年代値を示した.このことは,ユニット_I_,_II_が約28 ka~14 kaの間に堆積したこと,化石凍結割れ目が最終氷期極相期に形成されたことを示す.また,ユニット_III_は自破砕礫を大量に含むことや,残留磁化測定の結果が高温での定置を示したので(植木・近藤,2009),噴火に伴い急速に堆積したホットラハールであると考えられる.以上の結果より,利尻火山北麓の古期火山麓扇状地は野塚溶岩流の噴出前後の山頂部の火山活動によって主構成物質が堆積したこと,およそ14 kaまでに離水したことが明らかになった.また,最終氷期極相期に形成された化石凍結割れ目の存在は,ユニット_I_の堆積要因に寒冷な気候環境が寄与していたことを示唆する.以上のように,利尻火山北麓の火山麓扇状地は,山頂部での火山活動と古環境の両方が影響して形成されたと考えられる.<BR> 引用文献<BR>  石塚(1999)火山,44,23-40;植木・近藤(2009)日本地理学会発表要旨集(本大会).;近藤(2007)日本地質学会講演要旨,325;三浦(2003)日本の地形(2)北海道,東京大学出版会,225-232;三浦・高岡(1993)第四紀研究,32,107-114.守屋(1975)北海道駒澤大学研究紀要, 9/10,107-126.

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680670156032
  • NII論文ID
    130007016360
  • DOI
    10.14866/ajg.2009s.0.100.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ