Traditional knowledge and scientific evidence of mobile pastoralism in Mongolia

Bibliographic Information

Other Title
  • モンゴルの遊牧の伝統的知識の科学的検証
  • A case study : Meteorological environment of winter and summer camps for livestock
  • 家畜にとっての冬営地と夏営地の気象条件

Description

1.はじめに<br>  モンゴル国では乾燥で寒冷という厳しい気候環境下で数千年にわたり遊牧が生業として行われ、その持続可能性が注目される。しかし遊牧技術の客観的検証・評価は充分でないため、発表者らは遊牧に関する伝統的知識の科学的検証を目的にモンゴル国北部のボルガン県の森林草原地帯で気象学的・生態学的・人類学的調査を実施している。前稿では谷底にある夏営地と斜面上の冬営地の気温差から、盆地底の接地逆転層を避けた斜面温暖帯に冬営地が設置されている可能性を指摘した(森永ほか、2009年春地理学会予稿集)。本稿では同地点で継続している気象観測の結果より、家畜にとっての夏営地と冬営地の気象条件について報告する。<br><br> 2.調査地域と観測方法  <br>  調査地域は、モンゴル国北西部ボルガン県中部の森林草原地帯にある。観測点であるチョローン氏の冬営地は県庁所在地(48°49N, 103°31E, 1220m)から北西約20kmの丘の中腹に、夏営地は北西約7kmの谷底の川沿いにあり、標高はそれぞれ1492mと1300mで、192mの標高差がある。冬営地および夏営地でOnset社HOBOシリーズの測器を利用して、2008年8月23日から2009年3月19日まで1時間ごとに気温、湿度、風向・風速および日射を測定した。気温は、地表面から高さ2mで温湿度計(S-THA)を用い、日除けのシェルタ(M-RSA)をつけ自然通風、風向・風速は、高さ2.5mで三杯型の風向・風速計(S-WCA)を用いて測定した。 <br><br> 3. 結果<br>  図1は冬営地と夏営地の気温とガストの冬季間(2008年12月―09年2月)の1時間値の散布図である。夏営地の方が強い風が吹く事例が多い一方、微風あるいは無風の事例も多い。観測期間中の1時間値のデータでは、風速が秒速0.5m以下だった事例は、冬営地で49回に対し夏営地で276回である。斜面上にある冬営地では上方からの微風が吹き続け、夏営地に比べて冷気が溜まりにくい可能性がある。 図中にy=0.4x+12.3という線が記入されているが、これはモンゴル国の牧畜気象学の成果である気温・風速と採食行動の関係図から読み取った近似式で、この線よりも上側ではヒツジは寒さと強風のために草地で採食が不可能になるとされる。冬季間中にこの線を越えた厳しい条件が観測されたのは、冬営地と夏営地でそれぞれ12.3%と41.3%で、冬季間は冬営地が家畜にとってよりよい気象条件にあることが明らかである。

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390282680670202496
  • NII Article ID
    130007016448
  • DOI
    10.14866/ajg.2010s.0.277.0
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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