家電量販店の再編成と地域家電小売業の役割

書誌事項

タイトル別名
  • Restructuring and roles of consumer-electronics retailers
  • Restructuring of distribution systems and their regional problems part4
  • 流通再編と地域への影響(4)

説明

1.はじめに<BR>  秋山(2006)によると,日本における家電流通システムには,その中心を担う小売業者の勢力に3度の入れ替わりがあった。その中心となったのは,第一にメーカーの流通系列化における系列店であり,第二は日本電気専門大型店協会(NEBA)に加盟する家電量販店である。1990年代後半からは,NEBAに加盟せずローコスト経営を指向する少数の家電量販店と,カメラ系と呼ばれ大都市のターミナルに店舗を立地させる量販店が日本の家電流通を主導している状態にある。<BR>  以上のように,店舗の大型化,郊外指向・ターミナル型の店舗立地,寡占化,多店舗化,ローコスト経営そして低価格志向といった現代日本の小売業の抱える特徴を,家電流通は端的に表している業界といえよう。<BR>  本発表では,家電量販店の再編成を,年間販売額上位企業の動向から明らかにするとともに,地域の家電小売業の置かれている現状と地域の小売業において果たす役割を検討する。本研究で対象とする家電量販店とは,大規模小売店舗を多店舗展開する業態店を指し,地域家電小売業とは,おもにメーカー系列店を出自とする中小規模の小売業者であり,特に茨城県の小売業者を対象として,聞き取り調査を実施した。<BR> <BR> 2.家電量販店の再編成<BR>  兼子(2004)は,1990年代には専門店チェーンが各企業の地盤とする地域で寡占的ドミナントを形成していた状態から,他地域に積極的に進出し,競合状態が生起するようになったことを指摘した。家電量販店はこの最たる事例であり,コジマ,ヤマダ電機といった北関東のリージョナルチェーンが,1990年代後半以降他地域に進出し,特に後者は2002年以降年間販売額で首位になって以降,全国に店舗網を拡大した(図1)。<BR>  その一方で,秋葉原を出自とするチェーン店の経営破綻が相次ぐとともに,エディオンに代表されるリージョナルチェーンの合従連衡の動きが加速した。結果として,家電量販店は少数の大規模チェーンに集約される寡占状態へと変化しており,地方都市では郊外幹線道路沿いに,大都市では駅前ターミナルを中心に立地して,激しい商圏争奪を繰り広げている。<BR> <BR> 3.地域家電小売業の役割<BR>  家電量販店の成長要因は,大量仕入れや自社物流システムの構築によるローコスト経営により,価格競争力で優位に立つことである。この点において,それまでメーカー系列店として成立してきた地域の中小家電小売業は不利な状況にあると言わざるを得ず,その数を急減させている。例えば,中小の家電小売業を中心とする協同組合である茨城県電機商工組合の組合員数は,1996年の517店をピークとして一貫して減少を続け,2009年では313店まで急減した。<BR>  このような地域家電小売業の減少は,家電量販店との競合に加え,家電製品の普及期の高度経済成長期に商売をはじめた経営者が,年齢的に引退を迎える時期にあること,デジタル家電のような多品種で短サイクルに登場する新製品への対応が難しくなっていることなどが理由として挙げられる。加えて,地域の家電小売業者の中には修理・工事などの技術を有しているため,業種転換を図ることも選択肢としてあり,後継者不足の問題と相俟って店頭販売の不振が大きな課題となっている。<BR>  それでは,地域の家電小売業はこのまま淘汰されていくのであろうか。 大型量販店は,店舗が大規模であるが故に商圏も大きいため,空白となる小商圏市場が各地で生じている。家電小売業の経営者の持つ技術は,アフターサービスや保守・点検を通じて消費者とのつながりを密接にさせる要素でもある。こうした小規模経営のメリットに着目し,最近では中小の家電小売業者をフランチャイズ化したチェーンストアも登場しており,量販店との競合・共存への動向が注目される。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680670321920
  • NII論文ID
    130007016618
  • DOI
    10.14866/ajg.2010s.0.72.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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