地理学研究者の論文生産年齢
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- 矢ケ崎 典隆
- 東京学芸大学
書誌事項
- タイトル別名
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- Academi Productivity of Geographers
- An Analysis of the Geographical Review of Japan and the Annals of the Association of American Geographers
- 地理学評論とアメリカ地理学者協会年報の分析
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説明
日本の地理学研究者は何歳ころに論文生産性が高いのだろうか。この疑問に答えるために、『地理学評論』について検討を行った。分析の対象としたのは1984年から2003年までの20年間で、この間に掲載された論文について執筆者の年齢を学会名簿に基づいて判断した。連名論文の場合には筆頭著者で代表させた。論説、短報、総説、展望、特集号論文として掲載された日本語論文および英文誌の英語論文は合計983であり、学会名簿から年齢の把握が困難であった37論文を除いて、946論文(和文は725論文、英文は221論文)を分析対象とした。また、日米を比較するために、『アメリカ地理学者協会年報(Annals of the Association of American Geographers)』について同様の検討を行った。Articleとして掲載された554論文のうち、学会名簿から執筆者の年齢を把握することが困難であった89論文を除いて、465論文を分析対象とした。 地理学評論では、20年間における論文執筆者の平均年齢は37.9歳であり、年毎の平均年齢は34.0歳と44.0歳の間で推移する。執筆者の年齢は24歳から77歳までの範囲にあるが、最も多かったのは29歳の執筆者である。20代の執筆者は995論文の27.2%を占める。30代の執筆者は34.8%、40代の執筆者は17.5%、50代の執筆者は9.5%、60代の執筆者は4.6%である。すなわち、日本の地理学研究者は20代後半から30代前半にかけて高い論文生産性を示す。論文の種類別に分析すると、論説の執筆者は非常に若い。27歳が論説執筆者のピークであり、25歳から33歳までの執筆者によって書かれた論説は285で、これは論説全体の64.0%を占める。短報の執筆者のピークは29歳であるが、論説に比べると20代から30代に分散している。特集号論文の執筆者は、30代から60代にかけて分散傾向を示し、展望の場合も同様である。英語論文では、20代の比率は7.7%と低く、30代が38.0%、40代が29.0%を占める。和文の論説を書いた60代の執筆者は5人であったが、英語論文の著者は16人を数えた。すなわち、20代後半から30代前半の若手地理学研究者は論説の執筆に大きく寄与し、一方、40代以上は特集号論文や英語論文の生産に寄与している。 アメリカ地理学者協会年報の場合には、20年間における論文執筆者の平均年齢は42.6歳であり、年毎の平均年齢は39.0歳と45.7歳の間で推移する。年齢別にみると、最も多くの論文を書いたのは35歳の執筆者である。20代の執筆者の比率は2.2%と低く、30代が41.7%を占める。地理学評論と比べると、40代および50代の貢献が大きく、これらの年齢集団が総論文数に占める比率はそれぞれ34.4%と16.8%である。 アメリカ合衆国と比べると、日本の地理学研究者の論文生産年齢は若い。とくに論説というオリジナル研究の生産において、日本地理学会は若手研究者に依存しすぎである。40代から50・60代にかけてのベテランの地理学研究者が、オリジナルな研究と成果の公表にもっと積極的に取り組む必要があると感じられる。それが地理学のバイタリティを生み出し、社会における地理学の認知度を高めることにつながるのではないだろうか。
収録刊行物
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- 日本地理学会発表要旨集
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日本地理学会発表要旨集 2004f (0), 125-125, 2004
公益社団法人 日本地理学会
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キーワード
詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680670561664
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- NII論文ID
- 10020533780
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- NII書誌ID
- AA1115859X
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可