滋賀県草津市居住者における婦人服の購買地選択の規定要因

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Determinants of women's wear shopping site selection in Kusatsu city, Shiga prefecture
  • A comparative analysis under different spatial units
  • 異なる空間単位での比較分析

抄録

1. 研究目的消費者による購買地選択は、任意の地域を選択した上で特定の店舗を選択するという階層的な構造をなす。この消費者の購買地選択行動に関して、アンケートデータを利用して分析する場合、消費者購買行動データの集計空間単位が問題となる。そこで本研究では、消費者の選択対象店舗を任意の空間単位で集計した場合の最適な空間単位を検討する。その結果を踏まえ、本研究は、階層的な店舗選択問題を検討する際に、_丸1_選択対象店舗が立地する県・市といった空間単位で集計した「都市レベルでの階層の場合」と、_丸2_空間単位で集計せず、具体的な店舗自体を分析対象とした「店舗レベルでの階層の場合」とで、消費者の購買地選択行動の規定要因がどのように異なるかを検証することを目的とする。2. 研究方法研究対象地域は、滋賀県草津市である。アンケートデータは、「地理情報システムを用いた地域計画立案支援システム」(研究代表者:矢野桂司、課題番号:11791009)と、「GeoComputationによる施設配置計画の支援システムの構築」(研究代表者:矢野桂司、課題番号:13558005)によるデータを用いる。アンケート回収方法は、2000・2002年3月の2年次において、タウンメール(全戸配達サービスシステム)を用いたものである。2000年のアンケート回収数は、総世帯数40,620世帯(住民基本台帳)中、7,644(回収率:18.8%)である。2002年は、同様に総世帯数42,410世帯中、4,696(同:11.1%)である。分析ではそのうち、女性のみ、かつ婦人服の購入店舗について回答しているサンプルを用いた。その結果、サンプル数は2000年で5,681、2002年で3,057となった。階層構造を示す消費者の婦人服購買地選択行動の規定要因を、「都市レベル」と「店舗レベル」の異なる階層から分析する。分析では、二項ロジスティック回帰モデルを適用した。分析過程は、以下の三段階である。_丸1_「都市レベル」の空間単位で集計する際の最適な空間単位について検討する。空間単位の基準として、一つは草津市を、もう一つは日常生活圏として滋賀県を適用する。_丸2_「都市レベル」集計時のアンケートデータの利用方法について検討する。本研究で用いるアンケート項目の形式は複数の店舗を選択できる形式である。しかし、分析時には選択店舗を一つに限定する必要がある。そこで、次の二つの方法を比較検討した。(a)消費者の最もよく利用する店舗が、草津市と滋賀県という設定した空間単位の域内か域外で判断する方法、(b)最もよく利用する店舗以外の店舗も用いて判断する方法である。(b)では、域外店舗の利用者を厳密化することが可能である。次に、域内店舗と域外店舗の二つを用いて、二項ロジスティック回帰分析を行なった。_丸3_「店舗レベル」での分析では、具体的な店舗自体を分析対象として分析する。分析対象店舗には、草津市内居住者の婦人服購買の利用頻度が顕著である、アルプラザ草津(Aスクエア)と草津近鉄百貨店の2店舗を用いる。そして「都市レベル」と同様に、二項ロジスティック回帰分析を行なう。3. 結果と考察_丸1_「都市レベル」で店舗を集計する空間単位は、データの収集範囲と同等レベルの行政単位で行なうと、実際の生活圏が行政界で分断され、機能的な統一性が無視されることがわかった。したがって、「都市レベル」といった空間単位で購買地選択行動を分析する際には、日常生活圏を覆うことのできる範囲で空間単位を設定するのが適切である。_丸2_「都市レベル」で集計した場合の店舗選択要因は、2000年と2002年では多少の差異はあるものの、主に店舗に対する満足度である。一方、「店舗レベル」での選択要因は、両店舗までの距離差、年齢である。結果として、「都市レベル」での分析と「店舗レベル」での分析とで、規定要因が異なることがわかった。このように空間単位の階層により規定要因が異なるため、どのような階層で分析をするのかを決定することは重要である。_丸3_アンケートデータの利用方法に関して、域外店舗の利用者を厳密化することは、モデル適合度が低下し、望ましくない。どのようにアンケートデータを利用するのかは今後の課題である。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680670566400
  • NII論文ID
    130007016761
  • DOI
    10.14866/ajg.2004f.0.140.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ