メルボルン都心部における建築物高層化の地域的特徴
-
- 堤 純
- 愛媛大学
書誌事項
- タイトル別名
-
- egional characteristics of the vertical growth of large-lot buildings in the CBD of Melbourne, Australia
説明
本報告は,オーストラリア・メルボルン市の都心部を対象に,建築物の高層化の過程にみられる地域的な特徴を分析することを目的とする。なお,本研究の対象地域であるメルボルン都心部とは,東をSpring 通り,西をSpencer 通り,南をFlinders 通り,北をLa Trobe 通りで区切られる東西約2km,南北約1kmの範囲であり,通称”city loop”の範囲とした。 メルボルン市はオーストラリア南部,ビクトリア州の州都である。2001年の国勢調査によれば人口は313万2900人を数え,シドニーに次ぐオーストラリア第2の大都市である。オーストラリアは統計データの整備および公開という点では先進国の1つである。Australian Bureau of Statistics(オーストラリア統計局,以下ABSと略記)のホームページには国勢調査に関わる多様なデータが公開されている(http://www.abs.gov.au/)。ABSではGISの導入も顕著である。最小の統計区単位CDレベル(collection district level)の境界ポリゴンデータは,"Digital Boundaries data"として販売されている。データの形式はGISソフトウェア「MapInfo」用の.mif/.midである。提供されるデータの座標系はオーストラリアの標準座標系であるGDA1994である。本報告では,これらのデータをESRI社の提供する変換ソフトを用いて.shp形式に変換して分析を進めた。また,メルボルン市は都心部の建物利用および業務機能の集積状況に関する"CLUE"データベース(土地利用と雇用に関する国勢調査Census of Land Use and Employment)を整備・公開している。このデータベースは大都市圏に関わる研究,教育,ビジネス意思決定支援など多様なニーズに応えるべく都心部に関する基礎的なデータの公開・利用促進を意図したものである。メルボルン市の都心および都心周辺部(概ね都心から5km)を12の地区に細分して詳細なデータが公開されており,オフィス床面積,事業所数,従業者数等がホームページ上にて無料でダウンロード可能である。これらの基礎的なデータに加え,メルボルン市役所から個別の建築物に関する階数,建築年,延床面積などのデータをCLUEデータベースから得た。これら提供されたGISデータをベースマップとして,現地において建物物高層化の過程に関する現地調査を実施した。メルボルン市都心部における建築物の高層化において特徴的なことは,特に1980年代以降に50階建てを超えるような大規模なオフィスビルが複数供給されたことである。加えて,1990年以降は30階建てを超えるような高層アパートも数多く立地した。メルボルン市における建築物の高層化の典型例は,1900年代前半(あるいはそれ以前)に建てられた低層のレンガ造りの店舗を取り壊し,周辺の区画を寄せ集めて一つの大きなビル建設用地を作り出し,その場所が超高層のオフィスビルへと変貌することである。高層のオフィスビルの供給地点は,1980年代まではCollins 通りの周辺に極端に集中する傾向がみてとれる。初期はCollins通りの東方から年代を追う毎に同通り西方にかけて進展した。しかし,1991年にBourke Place(55階建てオフィスビル,King通りとBourke通り交差点)の登場を契機に,オフィスビルはcity loop内に分散する傾向を示すようになった。また,メルボルン市中心部の繁華街に相当するSwanston 通りの両側は40mの高さ制限があるため,建築物の高層化は進展せず,建築年代の古い建物が比較的多く残ることが明かとなった。
収録刊行物
-
- 日本地理学会発表要旨集
-
日本地理学会発表要旨集 2004f (0), 146-146, 2004
公益社団法人 日本地理学会
- Tweet
詳細情報 詳細情報について
-
- CRID
- 1390282680670571136
-
- NII論文ID
- 130007016771
-
- データソース種別
-
- JaLC
- CiNii Articles
-
- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可