広告産業における都心集中の検討

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Analysis of Concentration within a City under Advertising Industry
  • From the Viewpoints of Managers and Creators in Advertising Production Companies
  • 広告制作会社の経営者とクリエイターの視点を通じて

抄録

1.はじめに<BR> 近年,クリエイティブ産業への関心が高まっている.広告産業はクリエイティブ産業の1つとして位置付けられ,海外では多くの研究が蓄積されている.しかし,日本では,広告産業の市場規模が世界第3位であるにも関わらず,地理学での研究蓄積はあまり進んでいないと言わざるを得ない.加えて,広告産業では他のクリエイティブ産業と同様のメカニズムで企業の立地が決定されるのか等,検討の余地がある.<BR> 以上の問題意識から,本研究は東京都区部に立地する広告制作会社を対象とし,企業の経営者とクリエイターの視点を通して,広告制作会社の立地要因および立地に対する評価を明らかにし,広告産業の都心集中を検討することを目的とする.<BR> 調査対象地域は,東京都区部である.後述するように,東京の市場規模は他の道府県を圧倒しており,広告関連会社が集中している.調査は,社団法人日本広告制作協会東京地区の会員企業82社にアンケート票を配布し,26社(31.7%)から有効回答を得た.同時に,各社に対して,クリエイターを対象としたアンケート票を5部ずつ計410人分配布し,88人(21.5%)から有効回答を得た.<BR>2.広告産業の現状<BR> 日本の広告産業は,日本の対GDP比で約1%を占めると言われ,日本の経済成長とともに市場規模が拡大してきた.2009年の日本の総広告費は,2008年に起きた世界不況の影響で5兆9,222億円(前年比88.5%)と大幅に減少し(電通,『日本の広告費』),広告産業の「構造不況」という言葉も聞かれるようになった.<BR> 近年では,大手広告会社が系列の制作会社を設立する内制化という動きや,インターネット広告の台頭などメディアの多様化,4マス媒体の衰退など,広告産業全体の構造が変化してきている.<BR> 対象地域である東京都区部には4,046社(対全国比33.9%)が立地し,63,234人(同42.2%)が従事している(総務省,『平成18年事業所・企業統計』).また,経済産業省『平成20 年特定サービス産業実態調査報告書』によれば,東京都の市場規模は5兆3,498億円(同60.4%)と圧倒的なシェアを誇る.<BR>3.分析の概要<BR> アンケート調査によれば,調査対象企業は,1960年代~80年代に設立された企業が多い.企業規模は,資本金1,000万円以上3,000万円未満,年商1億円以上10億円未満の企業が約半数を占める.<BR> 企業の立地選択要因をみてみると,交通の利便性,場所のイメージに次いで,広告主との近接性が挙げられた.実際,対象企業の取引範囲は23区内でほぼ完結する.これは,広告制作において,「企画・コンセプトの共有」,「相手の意識・姿勢を読み取る」必要性から,対面接触をベースとしたコミュニケーションが重視されるためである.対象企業の中には,主要受注先に週に20~30回訪問するケースも見られた.<BR> 対象企業が立地する地域(区レベル)への評価では,区ごとに若干異なるものの,交通の利便性,場所のイメージなどが上位に挙げられた.一方で,他企業とのパートナー関係の構築や,ライバル企業の動向の把握に関する項目は相対的に低い評価がなされていた.<BR> クリエイターの地域に対する評価は,区ごとに大きく異なる.同業者との関係性の構築や切磋琢磨など,同業者間ネットワークに関する評価に関しては,中央区で高い評価がなされたが,千代田区と港区では低い評価が比較的多かった.<BR> 本発表では,立地地域に対する評価も含め広告産業の都心への集中について,ヒアリング調査結果を踏まえ検討する.

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680670593152
  • NII論文ID
    130007016815
  • DOI
    10.14866/ajg.2010f.0.22.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ