東京大都市圏郊外の高齢化

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タイトル別名
  • Population Aging in the Suburbs of the Tokyo Metropolitan Area
  • A GIS Analysis of the Grid Square Statistics
  • GISによる地域メッシュ統計の分析

抄録

【I はじめに】<br> 高度経済成長期に東京圏をはじめとする大都市圏に大量に流入した若年人口は,その多くが遠心方向の住宅取得プロセスを経て郊外に居住している(川口,2002).2012年以降,彼らの中心をなす第1次ベービーブーム世代が65歳以上となることからもわかるように,大都市圏郊外には大量の「高齢者予備軍」が蓄積している.一方,近年人口の都心回帰が注目されているが,矢部(2003)などに報告されているようにその主流をなすのは若年者であり,彼らが郊外地域からの移住者であるとすれば,郊外の高齢化はさらに加速されることになる.本研究では東京大都市圏を対象として,1995-2000年の5歳階級別人口のコーホート変化を単純に将来に延長することにより,2030年までの老年人口割合の推移を観察した.<br><br>【II 東京大都市圏の将来の高齢化】<br>1.2030年までの年齢別人口の推計<br> まず,東京大都市圏内の基準(3次)地域メッシュについてコーホート変化率法に基づく人口推計を行った.具体的には,1)1995-2000年の男女5歳階級別コーホート変化率が2030年まで一定,2)2000年の子ども・婦人比が2030年まで一定,3)全メッシュの2030年までの出生性比は1995-2000年の全国の出生性比105.5,とする仮定をおいた.<br>2.将来の年齢構造をもとにした各メッシュの類型化<br> 上の方法で推計された2015年の5歳年齢階級別人口割合をクラスター分析し,各メッシュの類型化を試みた.なお,データ数が膨大であるために,原データである5歳階級別人口割合(男女計)を列に,各メッシュを行にとった地理行列データに主成分分析を施し,抽出された合成変数(5変数)にクラスター分析を適用した.クラスター分析にはメッシュ間の相関係数を距離としたウォード法を用いた.結果として7つのクラスターが抽出されたが,そのうち,上位4クラスターに全メッシュの95%が入る.<br>3.各類型における高齢化の進行<br> クラスター1 第二世代の人口減少率が第一世代をわずかながら上回るため,人口の減少は起こるが高齢化のスピードは緩やかで,基本的には現状維持の状態が続くと考えられる.該当する地区は,葛飾区小岩など,形成されて時間が経過している既存の住宅地区である.<br> クラスター2 第二世代の人口減少率が第一世代の増加率を大きく上回る.第二世代が転出していると推測されるため,人口の減少と高齢化が速いスピードで進むと考えられる.該当する地区は,埼玉県日高市長瀬団地など,郊外地域,なかでも住宅団地に多く分布する.<br> クラスター3 第二世代の人口数が第一世代を上回り,人口減少のスピードも第一世代より緩やかである.そのため,地区人口の減少と高齢化が比較的緩やかに進むと考えられる.該当する地区は,東京都江戸川区松江などである.23区の縁辺や郊外地域に広がる.<br> クラスター4 第二世代人口が第一世代を大きく上回るが,年齢構成に偏りが認められ,20から30歳代が地区内に転入していると考えられる.同傾向が続くならば地区人口は増加し,高齢化もさほど進展しないと考えられる.該当する地区は東京都世田谷区上野毛などである.<br>4.距離帯別・鉄道路線からの距離別の分析<br> 次に距離帯別・鉄道路線からの距離別に高齢化の進み方が異なるかどうかメッシュごとに分析を行った.前者については,0-10 km,10-30 km,30-50 kmの各ゾーンごとに老年人口割合についてのメッシュ数の度数分布を求め,変化を観察した.その結果,2000年では0-10 km帯において高齢化が最も進行していたのが逆転し,2015年には30-50 km帯の高齢化水準が最も高くなることがわかった.また後者については30-50 km帯を対象に,1)鉄道路線を含むメッシュ,2)1)を除く鉄道路線から1 km以内のメッシュ,3)1)2)を除くメッシュに3区分して変化をみたところ,2000年には3者の間にほとんど差がなかったが,2015年には高齢化水準が3)→2)→1)の順となった.これは,近郊よりも遠郊において,また駅の近くよりも駅から遠い住宅地においてより急速に高齢化が進行することを示すものであり,バブル期等に開発された利便性の悪い住宅地からの若年・中年人口の流出を示唆するものである.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680670935168
  • NII論文ID
    130007017304
  • DOI
    10.14866/ajg.2004s.0.119.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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