City and Housing: Possibilities of Housing Studies in Urban Geography

  • Kubo Tomoko
    Graduate Student, University of Tsukuba JSPS Research Fellow

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Other Title
  • 住まいから都市をみる:都市地理学における住宅研究の可能性

Description

1.問題意識<BR>  都市地理学のテーマとして,住宅の供給構造や居住分化,居住地構造は重要な課題である。欧米の都市地理学においては,居住に関する研究が盛んに行われ(Johnston,1984),住宅や居住者の分布特性,移動特性に関する多様な理論が構築された(Robson,1975; Knox and Pinch,2000)。しかし,住宅市場の特性が日本と欧米では異なることや,居住者の棲み分けや社会階級が明確でないことから,日本の都市地理学者は欧米の住宅理論や都市構造モデルを日本の都市に適用してこなかった(由井1999,阿部2003)。 また,欧米の都市地理学においては,都市のlivabilityや,グローバル化時代に競争力を持つ都市の在り方など都市と住宅・居住者に関する多様な議論が展開されている(たとえばLey 2010)。つまり,都市居住をとりまく様々な状況が変化している中で,都市がいかなる居住特性,居住環境,livabilityを有しているのかといった「都市に住まうこと」を検討する多角的な研究が行われてきた。一方で,日本の都市地理学においてはこれらの議論を吸収しきれておらず,欧米の都市地理学との間に大きな隔たりがある。<BR>  本発表では,都市居住に関する研究動向を整理し,日本の都市地理学における住宅・居住研究の可能性を検討する。<BR><BR> 2.都市居住を扱う視点の多様化―日本の都市地理学の課題<BR>  世帯構成の多様化や晩婚化,共働き世帯の増加といった社会状況の変化は,住宅市場や居住選好に大きな影響を与え,郊外化から都心居住へと都市の居住地構造を変化させてきた。この背景には,1990年代後半以降,都市中心部でマンション供給が増加し,郊外の戸建住宅取得に拘らない核家族世帯や単身世帯によるマンション購入が顕著になってきたことがある。 この課題に対して,発表者は,マンション供給にともなう都市の変容(久保 2008,2010a, 2010b),世帯の多様化にともなう住宅供給の変化(久保・由井2010),郊外住宅地の持続性(Kubo et al. 2010)などの研究を行ってきた。現代日本の都市居住を把握するには,住宅だけをみるのでなく,家族・就業との関係を総合的に検討することや,住宅市場や社会経済状況の国内・国際動向を捉えることが不可欠になりつつある。欧米の都市地理学や,Housing Studiesなどの国際的・学際的な学問領域における議論を柔軟に吸収するとともに,日本の都市地理学で得られた研究成果を国際的・学際的に発信し積極的に議論を行うことが必要である。<BR><BR> *参考文献*<BR> 阿部和俊 2003.『20世紀の日本の都市地理学』古今書院.<BR> 久保倫子 2008. 水戸市中心部におけるマンション購入世帯の現住地選択に関する意思決定過程.地理学評論 81:45-59.<BR> 久保倫子 2010a. 幕張ベイタウンにおけるマンション購入世帯の現住地選択に関する意思決定過程.人文地理 62:1-19.<BR> 久保倫子 2010b.マンションを扱った地理学的研究の動向と課題-日本での研究を中心に-.地理空間 3:43-56.<BR> 久保倫子・由井義通 2010.世帯の多様化に対するマンション供給の変容―東京大都市圏におけるメジャーセブンの事例―.日本地理学春季学術大会発表要旨集p. 518。<BR> 由井義通 1999.『地理学におけるハウジング研究』大明堂.<BR> Johnston, R. J. 1984. City and society an outline for urban geography. Hutchinson, London.<BR> Knox, P. and Pinch, S. 2000. Urban social geography an Introduction (fourth edition). Pearson Education Limited, Harlow.<BR> Kubo T., Onozawa, Y., Hashimoto, M., Hishinuma, Y., and Matsui, K. 2010. Mixed development in sustainability of suburban neighborhoods: The case of Narita New Town. Geographical Review of Japan Series B (in printing) <BR> Ley, D. 2010. Millionair migrants: Trans-pacific life lines. Wiley-Blackwell, UK.<BR> Robson, B. T. 1975. Urban social areas. Clarendon Press, Oxford.

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390282680670947712
  • NII Article ID
    130007017330
  • DOI
    10.14866/ajg.2010f.0.143.0
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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