ロンドン北東部におけるジェントリフィケーション

書誌事項

タイトル別名
  • Gentrification in North-East London

説明

グラスによって、ロンドンの伝統的な住宅を再生する事例としてジェントリフィケーションが報告されたのは、50年前である。現代では伝統的な住宅の再生だけではなく、最先端の居住として都市景観の変化が注目されている。<br> テムズ川沿岸のドックランズと、内陸部の運河付近には産業が集積するとともに、多くの移民労働者が来住した。第二次世界大戦後には、縫製工場や印刷工場、靴製造工場などがシティの北東部に集積した。水運がすたれると、これらの産業の多くも衰退した。  1980年代よりドックランズはエンタープライズゾーンに指定されて、規制緩和とともに、税の優遇措置が設けられ、民間の投資による開発が進められた。その後、2000年代の空間開発戦略として『ロンドンプラン』が策定された。そのなかで複合開発予定地域が示され、新しく雇用と住宅を提供できる地域として、大規模で、放棄された土地が含まれている。特に、テムズ川をはじめとした運河や小河川を含めた水路を、ブルーリボンネットワークとして、建造物のデザインに配慮した、持続可能な開発を行うことを謳っている。<br> テムズ川沿いの工場跡地や放棄された土地、建物が取り壊されたところでは新築のジェントリフィケーションが発現し、再投資と高所得者による地域の社会的上向化、景観の変化、低所得の周辺住民の間接的な立ち退きが起こっている。<br> 本研究ではジェントリフィケーションの指標として、専門・技術,管理職就業者数の変化を使用する。2001年から2011年の増加率をバラ別にみると、北東部のタワーハムレッツとハクニーでは50%を超えている。テムズ川や運河沿いには、複合開発予定地域として大規模な住宅供給が進められてきたところもあり、専門・技術,管理職就業者の増加率が高い。図1は、タワーハムレッツとハクニーにおける専門・技術、管理職就業者数の変化を示したものである。キャナリーワーフ近くのミルウォールで増加しているほか、ライムハウスなどのテムズ川沿いと、内陸部のショーディッチやホクストンにおいて大きく増加した。<br> キャナリーワーフは、1980年代より超高層ビルを中心としたオフィスビル開発が進められ、金融や情報関連の企業が進出して、ロンドンの新たな都心となった。ミルウォールは掘り込み港に面しており、その水面は残されている。こうしたウォーターフロントが、2000年代の住宅開発の中心となっている。新たな都心の形成がジェントリフィケーションの進行に大きな影響を与えた。新築のジェントリフィケーションの進行により周辺住民との所得格差は拡大し、アフォーダブルな住宅が相対的に少なくなっていることが問題である。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680671044736
  • NII論文ID
    130005473595
  • DOI
    10.14866/ajg.2014s.0_100117
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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