愛媛県におけるいずみや(丸ずし)の受容

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  • The Acceptance of Izumiya (Maruzushi) in Ehime Prefcture

抄録

1.はじめに<br> いずみや(丸ずし)は,愛媛県に根付く郷土食の1つであり,アジやサワラ,イワシなどの魚とオカラを主原料とする。大きさや形状は,握り寿司とほぼ同じであり(写真参照),1個あたりの価格は50~100円ほどである。このようにいずみや(丸ずし)は,大きさ・価格等の面でも,手軽に食べることのできる食品であり,多くの人々に受け入れられやすいものである。また栄養面でも,良質なタンパク質や食物繊維を豊富に摂取することができる。本研究では,愛媛県におけるいずみや(丸ずし)の生産・販売実態の解明と,消費者の認知・消費度合の把握から,いずみやの食文化が空間的にどのように受容されているのかを明らかにすることを目的とする。これにより,地域の食文化の一形態を明らかにできるとともに,第1次産業等の地域産業との関連性についても分析できることが見込まれる。 <br>2.いずみや(丸ずし)の認知度<br> 愛媛県の郷土食を取り上げた既存の文献等によると,新居浜市近辺では「いずみや」の名称が,県南部の南予地方では「丸ずし」の名称が,それぞれ用いられる(土井中,2004)。また農山漁村文化協会編(2006)によれば,宇和島市の丸ずしは,1760年代に四国遍路を巡る旅人によって伝えられたとされ,地域で水揚げされるイワシなどが食材に用いられた。一方,松山市近辺では,祝事の際にいずみやが供されたとされる。県内の各市町に設置される食生活改善推進協議会が公表する情報では,松山市および新居浜市がいずみやの,宇和島市が丸ずしの,それぞれレシピをHP上で公開している。また,大洲市および内子町の「食育推進計画」において,郷土食の1つとしていずれも丸ずしが挙げられていた。 また,愛媛県内の大学生約500名に対していずみや(丸ずし)の認知調査を行った結果,愛媛県出身者245名のうち,46名(18.8%)がいずみや(丸ずし)を知っていたが,食べる機会や頻度はごく限られていた。 <br>3.愛媛県におけるいずみや(丸ずし)の生産・販売状況<br> 現在のいずみや(丸ずし)の生産・消費形態を把握するために,食品スーパーや惣菜店,飲食店などを訪れ,その販売有無,販売時の名称,価格,大きさや形状,製造者(企業)などを調査した。さらに製造者(企業)に対して聞き取り調査を行い,いずみやの製法,生産の歴史,年間生産数および売上,原料調達の方法,出荷先などに関する情報を得た。これらについては,発表当日に詳細を述べる。 <br>4.いずみや(丸ずし)の地域資源化に向けて<br> いずみや(丸ずし)は,現在も愛媛県においてある程度受容されていることが明らかとなったが,若年層になるほど消費は少なくなる傾向にある。本研究では,今後,いずみや(丸ずし)の定着・存在状況を把握するだけにとどまらず,文化的,経済的,そして栄養学的視点から,いずみやの地域資源としての重要性および活用可能性を検討することを目標としている。そのために,医学分野の研究者(管理栄養士資格および博士(医学))と連携した学際研究として発展させる予定である。<br>【参考文献】<br>土井中 照 2004.『愛媛たべものの秘密』アトラス出版.<br>農山漁村文化協会編 2006.『伝承写真館 日本の食文化10 四国』農山漁村文化協会.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680671058816
  • NII論文ID
    130005473636
  • DOI
    10.14866/ajg.2014s.0_100093
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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