Development and problem of the area brand by the building of a story

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  • ストーリー構築による地域資源ブランドの開発と課題
  • 沖縄瑞泉酒造を中心に
  • Focusing on Okinawa Zuisen Awamori

Abstract

1.はじめに 近年マーケティングの世界において、ブランド構築およびブランド価値を高めるために、モノよりもコト、経験、価値共創をつくりだすために必要な手法として、ストーリー・テリングが注目されている。田中(2012)によれば、これは古くは1980年代の記号論の世界に登場した経緯があり、近年ではマーケティング・コミュニケーションのために有効なコンテンツづくりとして重視されている<sup>[1]</sup>。本研究ではこれまでストーリーを重視したブランドづくりを展開してきた沖縄瑞泉酒造<sup>[2]</sup>を取り上げることで、地域ブランドとしてのブランド化への秀逸性だけでなく、企業の所在地域やその業界の地位向上に貢献する企業スピリットを明らかにする.<br>2.瑞泉の歴史 泡盛は琉球王朝の歴史とともに発展してきた500年以上の歴史をもつものであり、瑞泉酒造は1888年に創業されたのであるが、その始祖は琉球王朝における焼酎職から始まっている。その後、太平洋戦争において戦局が悪化する過程で、1944年には製造休業状態となり、末期には首里城周辺がアメリカ軍の爆撃を受け、同地は壊滅的な被害を受け、泡盛の製造所が破壊され、保管されていた古酒が消失するに至ったのである。戦後は直営工場となり、1949年に民営化され、1951年にようやく同社の酒造が再開され、1971年に現在の株式会社組織となり、全国での酒類調味食品品評会での受賞、イギリス国際ワイン&スピリッツコンペティションで初受賞をしている。<br>3.転機 こうした泡盛づくりにおいて県内を中心にその供給がなされてきたのであるが、同社にとって1998年6月にある転機となる出来事が判明したのである。それが東京大学分子細胞生物学研究所のコレクションに、戦前に東京大学坂口謹一郎博士が沖縄で採取した麹菌が奇跡的に残されていたである。これにより、東京大学の協力、沖縄国税事務所須藤博士の尽力と同社の職人たちの寝る間を惜しんでの泡盛づくりが功を奏して、ここでも2度目の奇跡である、戦前の黒麹菌によるお酒が復活したのである。この泡盛は「御酒(うさき)」と命名され、そのストーリー性から数多くのマスコミに取り上げられることで、県外への需要も増加することで、現在の売上の県内の55%に対して県外45%の数字を呼び起こした。<br>4.ブランド化 日本国内においては2003年から2007年へ続く「第2次焼酎ブーム」の到来により、焼酎乙類の需要が拡大し、特にいもを原料とした焼酎がその牽引力となって同ブームを支えたこともあり、より品質のよいアルコール度数の高い香りのよい沖縄の泡盛に対する需要も東京や大阪の市場を中心に増大することで、また沖縄サミットでの泡盛の登場や沖縄を題材にしたNHKテレビ「ちゅらさん」の全国放送などの影響もあり、その存在価値を高めてきた。低価格路線の焼酎甲類とは異なり、焼酎乙類業界にとっては本格派のものが売れ筋となっていることもあり、瑞泉酒造のそのストーリー性あふれる「御酒」や歌手のbeginとのコラボでつくられた「びぎんのしまー」、東京大学コミュニケーションセンターで販売されている「熟成古酒御酒」など、知名度の高さとともに、指名買いを生むブランド化された商品も数多い。<br>5.課題-マーケティング戦略の再構築- 沖縄における泡盛製造会社は47社からなっており、沖縄県酒造組合として組織化されていることから、今後のマーケティング戦略として組合として最優先すべき課題は(1)焼酎のカテゴリーからの脱却(2)新たな泡盛(スピリッツ)カテゴリーの構築である。焼酎甲類と焼酎乙類という二大焼酎カテゴリーの中でのポジショニングはプラスにはならないこと、また地酒という切り口で成功を収めてきた純米酒と同様に、泡盛業界も新たな価値提案をすべき時期に来ている。加えて、ヨーロッパにおける新たな泡盛スピリッツというカテゴリーでの提案はその度数の高さとともに、たとえばイタリアのお酒「グラッパ」や食前酒としてのスパークリング泡盛の開発など、今後その流通・マーケティング戦略の適切な話題作りとその構築が非常に重要になってくる。<br>注 [1] http://macs.mainichi.co.jp/space/web/041/marke.html(田中洋(2012)「#41 ストーリーテリング Story Telling」『WEB版スペース』毎日新聞広告局)。[2] 本研究はJSPS科研費 JP16K03966の助成を受けたものである。日本学術振興会 2016年度科学研究費補助金(基盤研究(C)課題番号:16K03966「中小・零細企業に必要とされるプラットフォーム化とブランド価値創造戦略の重要性」)。また、前研究課題<br>(24243048)の際に瑞泉酒造株式会社を訪ね、佐久本学常務取締役へのインタビュー調査を実施したものがベースとなっている。記して謝意としたい。<br>

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390282680671090816
  • NII Article ID
    130005635610
  • DOI
    10.14866/ajg.2017s.0_100159
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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