オールコア試料の解析に基づく陸前高田平野完新統の堆積過程(予察)

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  • Depositional process of Holocene sediment based on analyses of sediment cores obtained from Rikuzentakata plain, Northeast Japan

抄録

1.  はじめに <BR><br>  三陸海岸中~南部は山地が海に迫り,海岸線が著しい屈曲をなすリアス式海岸である.岬と岬に挟まれた湾には中小の河川が流入し,小規模な沖積平野が形成されている.陸前高田平野(図1)は,三陸海岸の中でも沖積平野の面積が比較的広く,ボーリングデータの解析から平野の発達過程および完新世の海水準変動について議論されている(千田ほか,1984; 千田・小原,1988).しかし,これまでの研究はボーリング資料の解析に基づいて地下層序を検討したものであり,年代測定値の個数も少数であるため,平野の発達過程が精度良く議論されているとは言い難い. <BR><br>  発表者らは,超巨大地震の繰り返しサイクル解明を目的として三陸海岸地域の地形・地質調査を実施している.この調査研究の一環として陸前高田平野でオールコアボーリングを掘削した.本研究では,予察的ではあるが,コア試料の解析と14C年代測定値に基づいて,完新統の堆積過程を検討する.<BR><br><br> 2.  調査地域概要<BR><br>  陸前高田平野は広田湾の湾奥に位置し,南北2 km,東西2.5 kmの三角州平野である.平野の大部分は海抜5 m以下と極めて低平である. 海岸線沿いには浜堤としての砂堆,その内陸側には潟湖としての古川沼が認められ,旧河道が平野の全域に分布している(千田ほか,1984).<BR><br><br> 3.  試料と方法<BR><br>  コア試料は,気仙川の左岸側,現海岸線から約500 m内陸側の陸前高田市気仙町で掘削された.コア掘削長は42.50 mで,深度40.60 m以深は基盤の花崗岩である.コア掘削地点は千田ほか(1984)の微地形分類図によると後背湿地にあたる.<BR><br>  コア解析内容は,岩相記載,粒度分析,電気伝導度(EC)測定,14C年代測定である.粒度分析はレーザー回折・散乱式粒度分析装置(SALD – 3000S; SHIMADZU)を用いた.EC測定は横山・佐藤(1987)を参考にECメータ(ES – 51; HORIBA)を用い,現在測定中である.14C年代は木片や貝殻を合計22試料に対し,株式会社加速器分析研究所に依頼し,現在測定中である.<BR><br><br> 4.  結果・考察<BR><br>  コア深度40.60 m以浅を,岩相・粒度の特徴から,5つの堆積ユニットに区分した.以下,それらの特徴を述べる.なお,発表時には,ECや14C年代測定値に基づいたより詳細な考察を行う予定である.<BR><br> 4.1 ユニット1 <BR><br>  本ユニットは,基質支持の細~中礫から構成されている.基質は中~極粗粒砂である.礫は亜角~亜円礫からなり,最大礫径20 cmである.基質支持かつ,粗粒な砂礫層から構成されることから,網状河川の環境が推定される.<BR><br>4.2 ユニット2 <BR><br>  本ユニットは,主にシルト~極細粒砂層と中粒~極粗粒砂層の互層からなる.本ユニットを通じて植物片や有機物,貝殻,生物擾乱が認められる.深度29.20 m付近にはマガキの密集層が見られる.河川から供給されたと考えられる植物片・有機物の存在や,海の影響を示唆する貝殻・生物擾乱の存在から,河川作用と波浪・潮汐作用がせめぎ合う河口~潮間帯の環境が推定される.<BR><br> 4.3 ユニット3<BR><br>  本ユニットは,貝殻や生物擾乱の認められるシルト層と,貝殻混じりで上方細粒化を示す中粒~粗粒砂層の互層からなる.粒度分析結果から,シルト層は上方粗粒化傾向を示す.シルト層中には木片が見られる.河川からの供給を示す木片の存在や,上方粗粒化を示すシルト層という特徴からプロデルタの環境が推定される.シルト層中に挟まれる中~粗粒砂層は,貝殻を含むことから海起源であると考えられ,後述のユニッ4(デルタフロント堆積物) の深度8.00~6.00 m付近の砂層と粒径が近いことから,デルタ前置斜面からの崩壊堆積物と推定される.<BR><br> 4.4 ユニット4<BR><br>  本ユニットは,上方粗粒化を示す砂質シルト層~極粗粒砂層からなる.本ユニット上部には細礫も認められる.本ユニット下部の砂質シルト層中には上方細粒化を示す中粒~粗粒砂層が認められる.本ユニットを通じて植物片や貝殻が認められる.上方粗粒化する特徴から,デルタフロントの環境が推定される.本ユニット下部に挟まれる中~粗粒砂層もユニット3と同様に,前置斜面上部からの崩壊堆積物と考えられる.<BR><br>4.5 ユニット5 <BR><br>   本ユニットは主にシルト層から構成され,ごく一部中~粗粒砂層を挟む.泥質堆積物を主体とし,盛土直下の堆積物であること,現在の微地形が後背湿地であることから,後背湿地堆積物と推定される.<BR><br><br><br>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680671241344
  • NII論文ID
    130005473770
  • DOI
    10.14866/ajg.2014s.0_100136
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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