デリー南郊におけるアーバン・ビレッジの居住者特性
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- 日野 正輝
- 東北大学
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- 由井 義通
- 広島大学
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- 宇根 義己
- 広島大学
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- シャルマ ビシュワ ラジ
- デリー大学
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- ラムダニ ファタファ
- 東北大学
書誌事項
- タイトル別名
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- characteristics of residents of an urban village in southern suburb of delhi
説明
1.研究課題 ここに言うアーバン・ビレッジとは、かつて都市周辺に立地していた村落が都市の成長・拡大のなかで市街化した地区を指す。アーバン・ビレッジの市街化は一般に計画的なインフラ整備を欠いたまま進行する結果,高密度で住環境は悪く,問題地域と目される.中国の大都市に多く存在する城中村は広く知られる。成長著しいインドの大都市にも、数多くのアーバン・ビレッジがある。 一方,アーバン・ビレッジは大都市経済との関係では,増大するフォーマルおよびインフォーマルな就業機会を求めて流入する貧困層に安価な居住の場所を提供する役割を果たしていることが知られている。また,自然発生的商業中心地として機能するところもある(岡橋編,2003). 本報告は,デリー南郊に立地するアーバン・ビリッジの一つHR地区を調査地に選び、居住者の社会・経済的特性を検討したものである。<br>2. 調査地域と調査方法HR地区は、デリーの外環状道路の外側に位置し、デリー開発公社が1962年に策定されたマスタープランに従って開発を進めた住宅地域に位置している。地区面積は10haほどでしかないが、2014年選挙人名簿に基づく人口(18歳以上人口)は12,106人に達する。住民属性を把握するためにアンケート調査を実施した。調査は、持家世帯と賃貸住宅世帯それぞれにアンケート票を作成し、戸別訪問して直接聞き取る方法で実施した。訪問先は地区全体に分布するが,訪問先は巡回のなかで在宅者が確認できた持家世帯の建物であった.調査した賃貸住宅世帯の多くは、持家世帯が住宅の階数を増築して造ったアパートの住人であった。その結果、持家世帯103戸、賃貸住宅世帯76戸から、所属する社会グループ、宗教、家族構成、出身地、職業、世帯収入、家族構成員の属性などについて回答を得た。調査日は,2014年2月19日から24日であった.<br>3.調査結果1)持家世帯の回答者の73%がイスラム教徒であった。住民の出身地は、持家世帯では50%がHR地区出身者であったが,ウッタル・プラデーシュ州およびビハール州出身者もそれぞれ20%,11%と相対的に多かった.それに対して,デリー他地区およびハリヤーナー州出身者は少なかった.賃貸住宅世帯では,HR地区出身者は皆無であった。代わって,ウッタル・プラデーシュ州およびビハール州出身者がそれぞれ40%と29%と多かった.回答者の社会グループは,「一般」(General )が過半を占めたが,後進諸階級,指定カーストも45%であった. 2)世帯形態は、核家族が60%であった.次いで、世帯主夫婦と既婚および未婚の子供世代からなる家族、親子孫の3世代家族が相対的に多かった。単身世帯、夫婦のみの世帯は少なかった。世帯主の学歴は、無学歴と大学卒とがともに25%を占めた。一方、世帯主の子供世代にあたる19・20才人口に限って、学歴構成を見ると、ほとんどが中・高等教育の修了者あるいは在籍者であった.3)世帯主の職業は自営業と非雇用者がそれぞれ40%と48%であった。自営業の多くはHR地区での店舗経営である。非雇用者の職種は多様である。臨時雇いが多数を占めるが、公務員、大学教授、教員なども見られた。世帯の労働月収も、貧困層に分類される労働収入7,500ルピー以下の世帯は10%未満であった。持家世帯の場合には、自宅の階数を増築して賃貸住宅を保有する世帯が多く、当該世帯の月収には労働月収に家賃収入が加わる。賃貸住宅の家賃は2部屋で5,000ルピー程度の収入が見込まれことから、賃貸住宅所有は安定した収入源を確保する有効な術になっていると理解できる。4)以上の点からすると、調査地区も他地域からの低所得者の流入先地としての役割を果たしてきたと指摘できる.同時に,子弟の学歴構成から推察されるように,当地区は流入家族が社会的上昇を果たす場としても機能しているとみてよい。持家世帯に他州出身者がすでに多い点も、そのことを示唆している。また、地区内では建物の増築が多くみられるが、不法建築の問題を別にすると、それらは住民の投資活動の現れであり、地区の活力を物語っている。<br>参考文献岡橋秀典編 2003. 『インドの新しい工業化―工業開発の最前線から―』古今書院.
収録刊行物
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- 日本地理学会発表要旨集
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日本地理学会発表要旨集 2014a (0), 38-, 2014
公益社団法人 日本地理学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680671257984
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- NII論文ID
- 130005481594
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可