東アジアの“伝統野菜”スイゼンジナにみられる葉形態
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- 小川 滋之
- 千葉大学大学院園芸学研究科
書誌事項
- タイトル別名
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- Leaf morphology in Suizenjina (Gynura bicolor) of traditional vegetable in East Asia
説明
研究の背景と目的 スイゼンジナ(Gynura bicolor)はキク科ギヌラ属草本植物であり,インドネシア,モロッカ諸島が原産であると考えられている.東アジアでは伝統野菜として古くから食されてきたが,市場に流通することは少なかった.しかし近年の研究成果により,ポリフェノール含有量が高い健康野菜として注目されるようになった.今後,健康野菜として普及する中では,地域ごとの個体の特徴を明らかにすることが重要になると考えられる.以上のことを踏まえて,スイゼンジナの葉形態の違いについて報告する.<br><br>スイゼンジナの産地分布 インターネット(Google)を用いて学名を検索し,個体の写真が掲載されているサイト,なおかつ写真撮影地域が特定できるサイトを対象に集計する調査を行った.インターネット上にみられる言語数そのものが影響している可能性は高いが,日本や中国,台湾などの東アジア地域が大半を占め,原産地のインドネシアを含む東南アジア地域の産地が少ない傾向がみられた.地域名では,水前寺菜(日本・熊本),金時草(日本・石川),紫背菜(中国・広東),红凤菜(台湾・台北),Okinawan spinach(アメリカ),ハンダマ(琉球),ว่านท้องใบม่วง(タイ・チェンマイ)などがみられた.<br><br>産地ごとのスイゼンジナ葉形態の比較 調査用の個体サンプルには,各産地から入手し,千葉県松戸市内の圃場において同条件下で栽培して苗を用いた.東日本地域産など全体的に北方系産地ほど長細い葉であることがわかった.他には,表面に羽毛があり鋸歯葉の先島地域(石垣島)産,葉裏の紫色が濃い中国広東省産など地域ごとに特有の形態がみられた.<br><br>スイゼンジナの葉形態が異なる要因 スイゼンジナは,地域ごとに意図的に品種改良を行った報告はない.日本に伝わったのは18世紀であり,苗生産には挿し芽が用いられている.こうしたことから各々の産地の自然環境に適応して地理的変異が起こったとは考えにくい.地域の人々の食文化などに合わせて,求められる形態へと変異したのではないかと考察した.
収録刊行物
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- 日本地理学会発表要旨集
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日本地理学会発表要旨集 2015a (0), 100129-, 2015
公益社団法人 日本地理学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680671275008
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- NII論文ID
- 130005490196
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可