ネパール地震支援活動報告

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書誌事項

タイトル別名
  • Report of a support activity for Nepalese earthquake
  • 私的な支援活動の試みとその反省点
  • An attempt of our private support and the problems

抄録

   2015年4月25日と5月12日に起きたネパール地震を受け、これまで調査で世話になった村に義援金を届けた。その際、日本地理学会の会員各位にも貴重な寄付を頂いた。改めてお礼を申し上げ、活動の反省点を述べたい。<br>   支援活動は私的でごく小規模なものとした。 (1)支援の対象はオカルドゥンガ郡ルムジャタール村のみとする。(2)1ヶ月後にせまった雨季を乗り切るための最低限の支援とする。同村だけでも約700世帯あり、うち約50世帯は全壊ないし半壊している。しかも、5月12日の余震以降、全住民が屋外で避難生活をしている。可能な範囲で最低限の支援を迅速におこなう必要があった。<br>   以上の経緯から、予算の上限を10万円とし、被災世帯のうち50世帯分のブルーシートを送ることとした。現地の友人に現地でシートを購入してもらい、後日現金で受け渡した。結果的に、合計190枚のシートを配り、出費は26万円程度となった。友人が被災世帯を確認した所、全壊半壊世帯が90あった。また、知りあいのネパール研究者があまったシート100枚をまわしてくれた。支援活動は財布の紐を心配しつつ、迅速な判断を求められることがわかった。<br>   幸いなことに、義援金は合計約68万円集った。ただし、50万円寄付して下さった人が1人、5万円の方が2人いた。残りの約8万円が11人の方の総計である。他に使用してないキャンプ用のテントを2張寄付してくれた方がいた。残金は村の学校に寄付した。<br>   6月中旬に現地に確認に行った所、村の全世帯にシートが行き渡っていた。われわれの支援のすぐあとに宗教や政党の支援物資が届いたとのことである。全壊・半壊など、著しい被害を受けた人には、政府からの救援物資が届いていた。ただし、その数は32世帯中4世帯だけだった。また、住民は竹細工を利用し、自力で仮設住宅を作りあげており、シートやトタンの屋根を付けていた。しかし、あくまで仮設に過ぎず、雨季明けと同時に家の再建問題が今後大きな問題となる。また、ルムジャタール村の周辺ではわれわれのシートしかもらってない世帯もいた。このシートは追加の100枚で配布したものである。シートの分配に関する問題や義援金を家の再建に欲しいと懇願する人もいた。支援物資や義援金の分配は他人に任せてはならないことを実感した。<br>   今後、ネパール政府は被災者に仮払金15000ルピー、家の再建費用20万ルピーを支給するという。しかし後者については、まだ受け取った人はいない。「被災者」の審査も厳格化することが予想される。また、実際に住宅を再建すれば、最低でも1軒100万ルピーかかるため、これだけでは足らないことは明らかである(1ルピーは約1.2円)。いわゆる二重ローン問題もある。家を建てたあとすぐに被災し、その借金が残る人もいる。<br>   結論として、政府の対応には限界があるが、発表者もこの点では同じだった。つまり、被災者が全壊・半壊世帯では足りないことを知りつつ、その数にこだわり、出し惜しみした。公助が行き届かない国では、親族や知りあいなどのコネを利用した共助が大きな力を持つ。このため、被災物資を公平に分配することは困難であり、自分で責任持って現地へ届けることが求められる。さらに今後、各世帯では住宅の再建に最低120万円の費用が必要であり、これを義援金だけでまかなうことは困難である。<br>   このため、草の根支援は終了とした。残りの費用の多くは住民が自助努力するしかない。今後、ネパールでは海外への出稼ぎや都市への移住がさらにいっそう多くなるものと思われる。また、今後金銭以外の支援も重要となるのだろう。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680671281152
  • NII論文ID
    130007017415
  • DOI
    10.14866/ajg.2016s.0_100184
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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