Spatial patterns and determinants of vacant houses in Tokyo Metropolitan Area
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- Wakabayashi Yoshiki
- Tokyo Metropolitan University
Bibliographic Information
- Other Title
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- 東京大都市圏における空き家の空間的パターンとその規定因
Description
人口減少社会を迎えた日本をはじめとする先進国では,最近になって縮小都市(shrinking cities)をテーマにした研究(たとえば,Richardson and Nam 2014)が増加し,その現れとしての空き家にも関心が高まっている.日本でも,これまで建築・都市計画分野(たとえば,浅見編2014)のほか,都市地理学でも空き家に関する研究(たとえば,由井ほか2014)が現れている.しかしながら,従来の研究の多くは実態と対策に焦点を置いており,広域的な空き家の分布パターンを定量的に検討した研究はほとんどない.そこで本研究では,東京大都市圏を対象としながら,GISを用いた空間分析によって空き家の分布パターンを捉え,その要因の地域差を地理的加重回帰(GWR)によって検討する.<br> 用いるデータは,2013年住宅・土地統計調査結果の市区町村別集計結果である.ただし,この調査は全ての市区町村をカバーしておらず,また全数調査でもない.空き家の実態について,国土交通省やいくつかの自治体で調査した例があるが,その多くが住宅・土地統計における数値が過大に見積もられていると指摘している.しかし,全国の空き家を統一的基準でカバーし,時系列比較も可能なデータは他に存在しないため,本研究では資料の限界をふまえてこれを使用することにした.対象地域は,東京圏(1都3県)にある2013年時点の214市区町村である.<br> 住宅・土地統計調査では,空き家の内訳を「賃貸・売却用」,「二次的住宅」(別荘等),「その他」(住み手のいない家)に分けている.千葉県を除く東京圏では,賃貸・売却用が空き家の6割以上を占める点に特徴があるが,それらは市場で取引されているもので,常に一定数存在する必然性がある.これに対し,周囲の環境に及ぼす衛生・景観・治安などの面での外部不経済をもたらすのは,おもに所有者がいながら放置された「その他」の空き家である.そこで,本研究では「その他」の空き家(以下,空き家と略す)に絞って,その分布と要因を分析した.要因分析には,必要に応じて2010年国勢調査の結果を組み替えて使用した.<br> 代表的な空間的自己相関指標であるMoranのI統計量を用いて空き家の分布傾向を測定した結果,その他の空き家でI=0.437と最も高く,空間的に連続的な分布傾向がみられる.ローカルMoran統計量を用いて空き家の凝集地域を調べると,東京都心への通勤限界地である千葉県東北部から南房総,および埼玉北部の市町村で空き家率の高い地域が検出された.逆に低い値の地域は,東京都区部を中心に埼玉南部,神奈川東部に分布している.<br> 空き家の分布の要因に関する過去の研究をふまえると,その規定因として,人口増加率,高齢化率,老朽住宅率,平均世帯人員などが考えられる.これらを用いてステップワイズ重回帰分析を行ったところ,人口増加率が低く高齢化率が高い地域ほどその他の空き家が多く,とくに高齢化率の効果が大きいことがわかる.回帰式の重決定係数から,これら2変数で約50%の説明率がある.しかし,GWRの結果によると,要因の効果に地域差があることが明らかである.とくに東京区部から埼玉東部にかけての地域でGWRの決定係数が低いことから,この地域では別の要因が空き家の分布を規定していると考えられる.<br> 本研究の結果から,東京大都市圏の(その他の)空き家は外縁部に多く,その分布は高齢化率と人口増加率によってほぼ説明できるが,要因の効果は地域によって差がみられることが判明した.
Journal
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- Proceedings of the General Meeting of the Association of Japanese Geographers
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Proceedings of the General Meeting of the Association of Japanese Geographers 2015a (0), 100114-, 2015
The Association of Japanese Geographers
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Keywords
Details 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680671292160
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- NII Article ID
- 130005490232
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- Data Source
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- JaLC
- CiNii Articles
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- Abstract License Flag
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