Geographical examination of agricultural productivity using census of agriculture and forestry

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  • 農林業センサスに基づく農業生産性の地域的検討

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目的と方法 農業の生産規模を部門にかかわらず統一的に把握するには金額で表される生産高が有用である.これから生産性を算出し構造的な検討の出発点とすることができる.地理学においては生産性の分布パターンやその変動を都道府県以下のスケールを単位として詳細に検討する研究が1960年代からさまざまに行われ成果を蓄積してきた(近年では犬井・大竹,2012).それらは農林水産省生産農業所得統計の市町村別値を利用してきた.しかし2006年を最後に市町村別値の公表が取り止められたためこの方法による研究の継続が困難になっている. そこで本研究では農業の生産規模と生産性を把握する代替的な統計を作成しそれに基づく検討を行う.この目的のため農林業センサスにおける農産物販売金額規模別農家数を用いる.すなわち農産物販売金額階級別に表章された農業経営体数に各階級の中央の値を乗じて総計することにより地域別の農産物販売金額合計の推計値を求め,これを経営耕地面積で除すると土地生産性の,農業労働力で除すると労働生産性の指標が得られる(井上・森本, 1991).農林業センサスは農業経営体を対象とする悉皆調査であるから,これらの指標は地域の属人的な農業生産規模を示すことになる.農林業センサスでは市区町村別や農業集落別の表章が行われているので,ミクロな地域差を把握することも可能である.本報告ではまず農産物販売金額および生産性の推計値を求め,得られた結果の特徴を取り上げる.このとき地域的な特性を都道府県別,市区町村別の2つのスケールからみてゆく.<br>手順 2010年農林業センサス結果の公表データから農産物販売金額規模別経営体数のデータを取得し,上述の手法で農産物販売金額の推計値を求めた.販売金額5億円以上の階級ではその上限が定められていないため便宜的に7億円を経営体数に乗じた.この結果を経営耕地総面積の値(ha)で割って土地生産性の指標とした.<br>結果 経営耕地1haあたり農産物販売金額の推計値を都道府県別にみると神奈川県(523万円),宮崎県(506万円),愛知県(502万円)が最高の水準にあった.いずれも園芸や畜産が主要な経営部門となっている県であり,これらに次ぐ地域もやはり園芸や畜産を主要な経営部門としていた.一方150万円より低い地域は10県あり,稲作を主要部門とするものが目立つ.たとえば新潟県,石川県,宮城県,富山県,秋田県,福井県である.大規模な畑作・畜産の卓越する北海道では最も低い.この指標はそれぞれの地域で主要な経営部門の土地当たり収益性を反映している. 全国の市区町村について,販売金額規模別経営体数が秘匿されているものを除きこれらの指標を得た.経営耕地1haあたり農産物販売金額が1000万円を超える23の市区町村には,多数の経営体が高い販売額をあげる全国有数の園芸産地(神奈川県三浦市,愛知県田原市,高知県芸西村等)が含まれていた.一方,一般に地域全体としては農業がふるわない山間部や大都市地域も含まれていた(山梨県早川村,神奈川県清川村,福岡市博多区,川崎市高津区等).後者では経営体総数と経営耕地面積がわずかなため,比較的高い販売額をあげる経営体が少数でも存在すれば土地生産性が高く算定される可能性がある.なお空間的分布の検討結果等を当日紹介する.<br><br>犬井 正・大竹伸郎 2012.日本における農業生産性の地域的変動—2000年~2005年—.環境共生研究 5: 1-23.<br>井上 孝・森本健弘 1991.関東地方における人口密度と農業土地生産性の空間的共変動—数理モデル構築の試み—.人文地理 43: 479-492.<br>

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390282680671309312
  • NII Article ID
    130005490261
  • DOI
    10.14866/ajg.2015a.0_100176
  • Article Type
    journal article
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
    • KAKEN
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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