地域建設業の災害応急対策力に関する考察

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タイトル別名
  • Disaster recovery services by local construction industry
  • -2014年2月秩父地方大雪災害のケーススタディ-
  • A Case of snowfall disaster in Chichibu region in February 2014

抄録

目的と背景 <br> 2014年2月14日から15日かけての降雪は、関東甲信越地方に大きな被害をもたらした。秩父地域では積雪98cmを記録し、年間降雪深さは、1953年以来の観測史上過去最高を記録した。山間地の秩父市大滝地区の中津川、大血川、三峰などでは大量の降雪による道路が寸断し孤立集落となった。 <br> 記録的大雪という自然災害の陰で、地元建設業者は不眠不休で災害対応に当たり、地域維持に貢献した。しかし、地域の災害支援を行う公的な役割を担っている建設業者の側面は、ほとんど認知されていない。  地元建設業者による災害応急対策活動は、日常生産活動によって使用する資機材を使用し、これまでの地域に根ざした工事経験を活用して行われている。その活動は、無償のボランティア活動として実施している部分も多い(丸谷・比江島・河野,2010)。初期対応において使用される人員、重機類の維持管理は企業努力に委ねられ、無償に近い建設業界の貢献活動の原資となるものは、地元自治体から継続的に受注する公共事業である(森本・滑川・八田,2009)。 <br>つまりは、地元建設業者は地元自治体から公共事業を受注することにより、地域への無償 又は収益性の低いインフラの維持管理及び災害応急対応ができるシステムが地域に構築されていると言える。本発表では、建設業者が緊急に対応する災害支援の役割について光をあて、人口減少及び高齢化の著しい過疎の山村地域、しかも「平成の大合併」で周辺自治体と合併し、共同体としての自治能力も弱体化し、地域社会の衰退が著しい旧大滝村地区を事例として、今回の大雪対応との関係で地元建設業者の災害応急対策力の実態とその問題点を発表する。 <br> <br>考察結果  <br>過疎地域における災害応急対策力とは、地域建設業者が持つ重機と重機を操作する人員数に依存する。   <br> 大滝地区における災害応急対策力の弱体化をもたらした要因として、公共事業受注減少に伴う経営状況悪化によって建設業者の重機保有台数も減少しており、大滝地区にあって利用できる重機が不足していた。また、建設業者の従業員そのもの減少と、特に大滝地区に在住する従業員が激減し、緊急に地元で除雪できる従業員が不足していたことが挙げられる。その背景として、公共事業減少と市町村合併を起因として、大滝地区を担当する地元建設業者の公共事業の受注減少に伴い、ボランティアともいえる災害応急対策が出来る体力が無くなってきていると言える。また、大滝地区の過疎化により、大滝地区の従業員が減少し、他地区からの従業員が増大した事も緊急時の従業員不足の背景として言えるであろう。 <br> 災害応急対策力のもう一つの柱である、地域住民による共助という視点で、大滝地区を見ると、地域間にネットワークが取りづらい中山間地域であり、過疎化が進行し限界集落と言える大滝地区において、住民間のボランティアである共助は期待できない。 以上の要因によって地域への無償又は収益性の低いインフラの維持管理及び災害応急対応ができるシステム、つまりは災害応急対策力の機能が低下していると言える。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680671404416
  • NII論文ID
    130007017473
  • DOI
    10.14866/ajg.2016s.0_100141
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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