解析対象変数の分布形がMoranの <i>I</i> 統計量の裾野分布に及ぼす影響

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タイトル別名
  • Potential influence of distributional properties of a target variable on the tail distribution of Moran's <i>I</i> statistic

抄録

MoranのI 統計量(Moran 1948)は、地区データの空間自己相関を検定する手法として広く用いられている。対象地域内の地区数、n、が十分に大きく、解析対象変数、X、が特定の仮定を満たす場合、I 統計量の確率分布は漸近的に正規分布に従うとされ、検定はその仮定の下に行われる。しかしながら、実際の検定の際に、I 統計量が正規分布となるための条件が精査されることはごく稀である上、Tiefelsdorf and Boots (1995)などにより、特にその裾野においてI 統計量の確率分布が正規分布から乖離することも指摘されている。山田・岡部(2013)は、Cliff and Ord(1971)の指摘を大規模シミュレーションにより拡張し、nが2,500程度であってもI 統計量の正規性が満たされる可能性は低いことを示した。特に、変数Xが尖度の大きい分布や離散分布である場合に、I 統計量の正規分布からの乖離が大きいとされた。<br>本研究では、I 統計量の裾野分布に着目し、解析対象変数Xが正規分布、対数正規分布、ポアソン分布の場合について、Monte Carloシミュレーションを用いた検証を行った。その結果、I 統計量を用いた検定では順列空間ランダムのシミュレーションにより棄却限界値を求めるべきであるという従来の知見を裏付けると共に、nが大きい場合にはXの分布形による影響はほとんどないことを示した。一方でこれは、nが小さいときにはXの分布形への配慮が必要であることを意味しており、これまであまり考慮されてこなかったXの分布形に関する仮定について注意を促す結果である。また、シミュレーションで得られるI 統計量の推定分布は、nおよび繰り返し回数が大きい場合には非常に安定していることから、大規模なシミュレーションにより地区数に応じた棄却限界値を予め算出しておき、実データの検定に利用することも可能と考えられる。こうした数表は、I 統計量の幅広い利用に繋がるだけでなく、過去の研究事例の再検証などにも活用が期待できる。  

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680671455872
  • NII論文ID
    130005481532
  • DOI
    10.14866/ajg.2014a.0_86
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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