地誌学習の再考
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- 秋本 弘章
- 獨協大学
書誌事項
- タイトル別名
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- Reconsideration of Regional Geography Learning
抄録
2008年告示の小中学校学習指導要領,2009年告示の高等学校学習指導要領は,1998年告示の学習指導要領と比較していくつかの点で大きな変化があった.その中で地誌学習の変化は特筆に値すべきものと考えられる.わが国の地誌学習について,そのあり方を振り返り,地誌学習の意義を再考する.<BR> 「地誌」と「地誌学」には若干の違いがある.「地誌学習」は地誌と地誌学習の双方を基盤としているが,そのどちらを重視するかによって,違いが生じる.「地誌」を基盤とすれば、国や地域についての地理的な事象についての内容理解に重点が置かれる.一方,「地誌学」を基盤とすれば,地域性の解明のための調査や分析,つまり方法を重視した学習が展開されることになる.<BR> わが国の初等中等教育の地理学習に求められたことは,地理的知識の伝達と定着であった.国民主権の国家においては,市民の誰もが責任を持って政治に参加するために最低限の地理的知識の習得が必要とされるからである.また,一般に人はよく知っている地域に強い親しみを感じる傾向があることから,日本を中心に「地誌」を扱うことで国民意識(愛国心)の涵養にもつながると考えられてきた.つまり,わが国の地理教育は日本や世界の現状を児童生徒に伝達するとともに知識として定着させることを主眼とした内容重視の地誌学習で行われてきた。<BR> しかし、内容重視地誌学習が,平板で網羅的、暗記重視といった学習を助長してきた.特に,中学校や高等学校において、平板で網羅的な扱いでは知識の定着は望めず,本来の目的も十分果たせない結果となった.こうした中で,中学校及び高等学校における地誌学習の改善がはかられてきた.すなわち,内容重視の地誌学習を基本としながらも,方法重視の地誌学習を加味していくという方向がとられてきたのである.1998年告示の中学校学習指導要領では,方法重視の地誌学習を中心に内容が構成されるようになったが,2008年告示の学習指導要領では,再び内容重視の地誌学習で構成されることとなった.<BR> 中学校の地理学習においては,地誌学習を中心に内容構成がはかられている.そのため,日本や世界の全域を地誌学習で扱う必然性がある.一方,高等学校においては系統地理と地誌を2つの柱として内容構成がはかられてきた.つまり,高等学校では,世界認識は,系統地理と合わせて育成されるため,地誌学習では世界全体を扱う必然性がない.このことが中学校の地誌学習と大きな違いである.<BR> 欧米の地理教育では,初等教育の段階から系統地理的な枠組みで内容構成されており,その中で世界認識を扱う.そのため,地誌学習は特定地域の総合的研究を行う単元として位置づけられている.つまり地域の現状の理解をはかるとともにこれからを考えるという方向性がある.系統地理を有するわが国の高等学校地理教育では,こうした方向性が重要であろう.一方,中学校では,「地誌学習」が世界認識の中核を担うので,従来の蓄積を生かしつつ,内容構成をはかっていく必要がある.
収録刊行物
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- 日本地理学会発表要旨集
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日本地理学会発表要旨集 2011s (0), 274-274, 2011
公益社団法人 日本地理学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680671521024
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- NII論文ID
- 130007017540
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可