東京大都市圏郊外地域における就業核の成長

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Growth of Employment Nucleation in the suburbs of Tokyo metropolitan area
  • ―1990年以降の通勤流動変化から―
  • :Case study of commuting flows change in after 1990

抄録

大都市圏における構造変化に関する研究は, 2000年代以降,郊外地域から中心市への通勤流動を論じたものはみられるが,郊外地域で完結する通勤流動の時系列変化や,郊外地域での就業上の中心とその結節地域の関係変化を考察したものは少ない。そこで本研究では,1990年以降の東京大都市圏において,郊外地域で完結する通勤流動の時系列変化を把握することで,就業上の中心を抽出すると同時に,その成長の要因を明らかにすることを目的とする。<br> 本研究の対象地域は,東京大都市圏とその周辺の1都6県の176市町村と設定した。大都市圏中心の求心力が弱まったとされる今日でも,国内最大の圏域を有していることから対象とした。対象年代は,2000年代以降の研究で指摘された変化を検討に加えるため,1990年から2010年の20年間とした。ここでは,通勤流動データが長期間にわたり把握できる国勢調査を分析の基礎データとした。これに基づき,対象地域の就業者数の変化,就業上の中心の特色と変化,その結節地域との関係変化などの考察を加えた。また,新たな就業上の中心についての分析では,事業所・企業統計調査(経済センサス調査)の小地域集計データを使用した。なお,本研究で取り扱う市町村単位データは,市町村合併の影響を除くため2010年10月時点の市町村を基準に組み替えを施している。<br> 研究の結果,対象地域では最近の研究の指摘どおり,郊外内部での通勤流動が増大しており,2010年時点で就業上の中心である就業核が50都市抽出された。就業核となる都市は,流入就業者数が周辺市町村と比較して多い傾向を示す。2000年以降の就業核とその後背地域との通勤流動についてみると,その強弱が,就業核自身の流入就業者数の増減,さらには当地就業者数の増減と関連していた。増加がみられた就業核は,インフラ・運輸業系就業者数の著しい増加と金融・保険・不動産業系,サービス業系就業者数の増加によるものが考えられる。また,流入就業者数を増加させた就業核は,郊外地域外縁部に多く分布し,新たなる就業核も出現した。このような成長就業核では,後背地域で常住就業者数が減少しているにも関わらず,流入就業者数および当地就業者数を著しく増加させていた。町丁別データを用いた分析により,大規模な工業団地の造成や物流拠点の建設,大規模ショッピングセンターなどの大型商業施設の開業に伴う就業機会の増加が要因であることが明らかになった。その背景には,鉄道路線の新規開業や高速道路の新規開通が大きく関係していると考えられる。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680671570048
  • NII論文ID
    130005489836
  • DOI
    10.14866/ajg.2015s.0_100090
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ