広島県における国際観光の動向と展望

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タイトル別名
  • International Tourism in Hiroshima Prefecture

説明

本研究においては、首都圏および関西圏以外では、今後、国際観光が最も成長する可能性が高い広島県における国際観光について、外国人観光客の訪問数の推移や国籍構成、さらに中国地方の他の4県や四国地方の諸県を含め周遊観光の可能性などの観点から検討する。広島県を訪問する外国人観光客数は近年、着実に増加している。その中では広島市および宮島への訪問数が特に多い。また外国人観光客の国籍ではアメリカ合衆国、オーストラリア、フランスなどの欧米からの観光客が7割と、全国の都道府県でも特に高い値を示している。これらの欧米からの外国人観光客の増加率は特に1990年代後半から2000年代後半にかけての宮島で高いが、これは同地がミシュランガイドに3つ星観光地として掲載された影響が大きいと考えられる。しかしその一方でアジアからの観光客の誘致は今後の大きな課題である。特に韓国人観光客の広島県訪問数は、同国から広島空港への直行便が存在するにも関わらず、フランス人またはドイツ人 観光客よりも少なく、わが国の中国・四国地方を訪問する団体旅行のコースにおいても広島県内の観光地はほとんど含まれていない。その背景としてはいくつかの要因が考えられるが、特に 日本の植民地支配を受けたゆえに原爆関連の史跡を被害者としての立場から見ることへの精神的葛藤の存在が大きいと考えられる。しかしその一方では、広島県東部の備後地区を中心に台湾人観光客が急増していることも注目される。彼らの多くはしまなみ海道を訪問しており、また広島市についても韓国以外の国からの観光客は増加傾向にあり、県全体ではアジアからの観光客の割合が少しずつ増加していることは否定できない。またこの他の広島県の国際観光の発展に向けた課題としては、広島市ー宮島間を除くと中国地方あるいは四国地方を含めた広域の国際観光が九州地方、北海道地方、北陸地方などの他地方に比べてかなり立ち遅れていること、外国人観光客の間で、瀬戸内海に代表される、いわゆる「海の文化」への関心が低いことなどが挙げられる。さらにこれらの要因とともに、山陽新幹線において外国人観光客がジャパンレイルパスで利用できる速達列車が少ないことや、今後中国地方において増加が予想される台湾などからの観光客が日常的に使用している中国語の繁体字の観光案内冊子が不足していることも無視できない課題である。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680671638400
  • NII論文ID
    130005490114
  • DOI
    10.14866/ajg.2015a.0_100012
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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