大都市の発展と郊外空間

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タイトル別名
  • Urban development and suburbanized space
  • メガシティ・デリーの郊外開発
  • a case study of Delhi metropolitan region

抄録

1991年の経済自由化以降、インドの都市は急速な拡大・発展をとげた。本研究は、インドの都市変化を象徴する郊外空間の実態に都市開発と住宅供給の側面からアプローチする。インドの大都市郊外では、経済成長の中で登場してきた新中間層をターゲットした住宅開発と商業開発が進められている。それらとともに、自動車や二輪車などの製造業の他、金融機関やソフトウェア会社のオフィスビルなどの郊外型ビジネスパークを兼ね備えた複合機能型の都市開発が進められており、本研究では、空間と社会が同期して変動する郊外開発の実像を明らかにする。<br> 1.デリー大都市圏の郊外開発<br>インド政府は国家プロジェクトとしてデリーの過大化防止と機能分散を目的として、デリー開発公社(Delhi Development Authority: DDA)を1955年に設立した。1957年にデリー開発法が出され、DDAは1962年に「Master Plan for Delhi, 1962 (MP-62)」を策定し、厳しい土地利用コントロールによってデリー市内の都市開発を抑制した。しかし、急速な都市成長に対してデリーだけでは対処できなくなったために、1985年に首都地域開発局(National Capital Region Planning Board, NCRPB)が設置され、広域的に都市計画を進めることになった。NCRPBはデリー隣接地域にグルガオンなどの6つのDMAタウンを指定し、流入人口の受け皿として都市開発を行った。 <br>2.グルガオン-マネサールの都市開発<br>デリー南郊に隣接するグルガオンの都市開発は1966年にハリヤーナー州都市土地開発局(Urban Estates Department Haryana, UEDH)によって始まり、1977年にHaryana Urban Development Authority(HUDA)が設立されると、州による都市開発は急速化した(由井、2005)。ハリヤーナー州の都市農村開発局(Department of Town & Country Planning, Haryana)は州の民間開発業者に開発を請け負うライセンスを与えており、1977年以来,HUDAと民間開発業者の両方が州の都市開発を請け負ってきた。この方法は「ハリヤーナー方式」といわれ、州政府がコントロールするメカニズムを実施する一方で、民間ライセンス業者の専門的な経験から学ぶという、二つのメカニズムがある。1996年に出されたグルガオンの『マスタープラン2011』では、HUDAは農民から大規模に土地を取得し、大規模な都市開発を行った。しかし、開発計画と実際の開発のプロセスに大きなずれが生じたり、隣接するマネサールも急激な都市化が進行したため、HUDAは2006年に新たなマスタープランとしてマネサールを含んだ”Gurgaon-Manesar Urban Complex”として, 21733haの計画区域に計画人口370万人の都市計画を策定した(Puri,  2007)。これはデリー東郊のノイダで、さらに遠方のグレーターノイダへと展開して開発が進行しているのと同様で、超郊外の開発がみられる(由井、2014)。 <br>3. 郊外空間の変容 <br>急速な都市化によりデリーの郊外空間は激変しつつある。農村地域に近代的で西洋風のライフスタイルをもった都市住民が流入し、高い塀と強固な門で囲まれたゲーテッド・コミュニティを形成している。その一方で、インドの都市計画では、計画地域内にある農村の改良や整備は対象外となっている。そのため、大都市圏内の農村では無秩序な都市開発が行われ、超過密のスラムのようになっている。これらの集落はアーバン・ビレッジと呼ばれ、住民の大部分は農地を手放しており、賃貸アパートの経営による不動産収入を得るなど、農業以外に就業している。しかしながら、一部の農民は集落内で水牛の飼育をしており、伝統的農村の生活様式と近代的な都市の生活様式が混在している。<br> 【文献】 由井義通 2005, デリー南郊・グルガオンにおける都市開発.『季刊地理学』57-2,79-95. 由井義通 2014, デリー大都市圏のマスタープランの変遷と開発実態.『日本都市学会年報』47号, Puri, V.K. 2007. Master Plan 2021 for Gurgaon-Manesar with complete map.. Jain Book Agency Publishers, Delhi.<br> 【付記】本研究は,平成26年度基盤研究(A)「現代インドにおけるメガ・リージョンの形成・発展と経済社会変動に関する研究」研究代表者:岡橋秀典(広島大)による研究成果の一部である。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680671649152
  • NII論文ID
    130005489726
  • DOI
    10.14866/ajg.2015s.0_100041
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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