本州北部における中期更新世に形成された海成段丘のpIRIR年代 - 特に三陸海岸北部について -

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  • Luminescence chronology of marine terraces of Middle Pleistocene in northern Honshu, using post IR IRSL method: A case study in northern Sanriku coast

抄録

Ⅰ.はじめに:海成段丘を対象とした多くの研究では,海成段丘の離水年代を明らかにするために段丘砂礫層や被覆層から指標テフラを見出すことによって議論されてきた場合が多い.しかし一方で,指標テフラが発見されない地域では,地形層序によって離水年代が推定されてきた.本研究で対象とする三陸海岸北部は,本州北部太平洋側でも特に海成段丘の発達が良い地域である.陸中海岸北部(久慈市~八戸市西部)においては,一部の海成段丘がテフラとの層序などから編年がなされている.一方で,久慈市以南の陸中海岸では,複数の異なる比高の海成段丘群が発達するが,指標テフラが海成層直上から見いだされる一部の段丘面を除き,発達史は不明な点が多い.本地域においては,2011 年の東北地方太平洋沖地震前後の隆起・沈降の挙動が注目されるとともに,巨大地震に直接に起因しない隆起のメカニズムの解明が求められている.活構造運動の詳細を明らかにするための基礎情報として,本地域においては中期更新世以降に離水した海成段丘高分解能な編年が必要である.以上の理由から,本研究では,三陸海岸の海成段丘において,新たな年代測定法を適用し高分解能な地形面編年をおこなうことを目的とする.編年にあたっては,堆積物中の鉱物から直接堆積年代を得ることが可能であるルミネッセンス年代測定法を適用する.<br>Ⅱ.地域概要:三陸海岸北部では,海成段丘面が広く階段状に分布しており,テフラとの層序や地形の新旧関係から,MIS 19程度までさかのぼると考えられている段丘面が認められている(小池・町田,2001).また,高位の段丘面は,侵食などにより汀線地形や段丘崖の認定が困難である.岩手県田野畑村の標高約170 ~210 m付近には海成段丘面が広く分布し,小池・町田(2001)によりMIS 19の段丘面に対比されている.本研究では,標高約180 mの段丘面上において総長710 cmのボーリングコア試料(MU-TN-MS1)を得た.<br>Ⅲ.pIRIR年代測定方法:現在最も一般化している石英のOSL 年代測定では,OSL 信号は約200 Gy で飽和することが経験的に知られており,日本ではMIS 5 以前の堆積物への石英のOSL 年代測定法の適用は困難である.そこで本研究では,より古い時代の堆積物に適用が可能とされる,ポリミネラルファイングレインを用いたelevated temperature post-IR IRSL (以下,pIRIR)年代測定法を適用した.従来,長石を対象としたIRSL 年代測定はフェーディングの寄与を見積もることが煩雑であるという問題があったが,pIRIR 年代測定法ではフェーディングが生じないとされるので,正確な年代を求めることができる.本研究では,pIRIR 年代測定法の適用にあたり,Thiel et al.(2010) などにしたがって,ポリミネラルファイングレインを用いて等価線量を算出した.測定は三重大学のRISOE,DA-15 を使用した.<br>Ⅳ.結果とまとめ:1)独立年代指標との比較…階上岳西麓の海成段丘露頭(小池・町田,2001)において,洞爺テフラ直下のローム層のpIRIR年代測定を行った結果,矛盾のない年代値が得られた.したがって,本地域におけるpIRIR年代値は概ね正確であるといえる.2)MU-TN-MS1コア・・・本コアの記載の結果,深度0~20 cmが腐植質土壌,深度20~695 cmがローム層,深度695~706 cmがシルトおよび砂層,706cm以深は砂岩であった.ローム層には厚さ数cm~約30 cmのテフラを複数枚挟む.これらのテフラは著しく風化が進み,径1 mm程度の石英を多く含む.深度695~700cmのシルトのpIRIR年代値は約60万年前を示した.以上の結果から,田野畑村付近の標高約180 m付近の段丘面がMIS 15に対比される可能性があると考えられる.発表当日は,周辺の露頭で得られた年代値も併せて,三陸海岸北部の中期更新世に離水した海成段丘の発達史を考察する.<br><br>引用文献:小池・町田(2001)『日本の海成段丘アトラス』東京大学出版会,105p. <br>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680671840384
  • NII論文ID
    130007017730
  • DOI
    10.14866/ajg.2016s.0_100318
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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